重度の嚥下障害で発症し対照的な経過を辿った延髄外側症候群の2例

延髄外側症候群は, 1895年にAdolf Wallenbergが発表し広く知られるようになった1). 原著に記載された所見(球麻痺, 小脳失調, 交代性解離性感覚障害)のほか, 神経核と伝導路の障害により, めまい, 眼振, ホルネル徴候, 嗄声, 吃逆, 発汗異常などを呈する. 嚥下障害は延髄外側症候群の50%以上に合併するといわれ早期に改善するものから遷延するものまでその経過は様々であり2, 3), 多くの患者や医療関係者が, その機能的予後や治療対策に頭を悩ませている. 延髄外側症候群における急性期嚥下障害では, 両側性の障害が多いとする報告があり, 重度の球麻痺に対する予後の見極めと...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 41; no. 8; pp. 555 - 560
Main Authors 笠原 隆, 小山祐司, 出江紳一, 秋山久尚, 古川俊明, 栗原由佳, 角谷直彦, 石田 暉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.08.2004
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ISSN0034-351X

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Summary:延髄外側症候群は, 1895年にAdolf Wallenbergが発表し広く知られるようになった1). 原著に記載された所見(球麻痺, 小脳失調, 交代性解離性感覚障害)のほか, 神経核と伝導路の障害により, めまい, 眼振, ホルネル徴候, 嗄声, 吃逆, 発汗異常などを呈する. 嚥下障害は延髄外側症候群の50%以上に合併するといわれ早期に改善するものから遷延するものまでその経過は様々であり2, 3), 多くの患者や医療関係者が, その機能的予後や治療対策に頭を悩ませている. 延髄外側症候群における急性期嚥下障害では, 両側性の障害が多いとする報告があり, 重度の球麻痺に対する予後の見極めと有効な治療法が臨床において求められる. 今回我々は発症早期のMRIの所見で, 延髄吻側に病巣があり, 嚥下造影(以下VF)検査では嚥下反射が誘発されず, 両側性に咽頭から輪状咽頭部の重度通過障害を呈した延髄外側症候群の2例のリハビリテーション(以下, リハ)を経験した. 嚥下障害に関しては典型的ともいえる早期改善と重度障害の遷延という対照的な経過を辿った2例だが, 急性期における予後予測には苦慮したため若干の文献的考察を加えて報告したい.
ISSN:0034-351X