リウマチ肺の肺胞毛細血管における免疫組織学的リモデリング

われわれは, 肺胞毛細血管の内皮細胞が肺胞壁の微小環境の変化に応じて免疫組織学的表現型を変動させることから, その意義をin vitro系で検討してきた. その結果, 内皮の細胞膜に常在する抗凝固因子トロンボモジュリン(TM)は, 肺腺癌細胞が浸潤するとdownregulateされ, 換わって凝固因子von Willebrand factor(vWf)の発現と血管新生が見られた. また内皮には新たな受容体(protease activated receptor:PAR)の発現を伴い生物学的に活性化される事実を証明してきた. リウマチ肺(RA)の肺胞壁は, 多彩なリモデリングを起こしまた血液凝固...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 6; p. 580
Main Authors 立原章年, 吉野槙一, 金恩京, 潘欣, 枝川聖子, 中谷千瑞子, 清水一, 藤原正和, ガジザデモハマッド, 川並汪一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.12.2003
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ISSN1345-4676

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Summary:われわれは, 肺胞毛細血管の内皮細胞が肺胞壁の微小環境の変化に応じて免疫組織学的表現型を変動させることから, その意義をin vitro系で検討してきた. その結果, 内皮の細胞膜に常在する抗凝固因子トロンボモジュリン(TM)は, 肺腺癌細胞が浸潤するとdownregulateされ, 換わって凝固因子von Willebrand factor(vWf)の発現と血管新生が見られた. また内皮には新たな受容体(protease activated receptor:PAR)の発現を伴い生物学的に活性化される事実を証明してきた. リウマチ肺(RA)の肺胞壁は, 多彩なリモデリングを起こしまた血液凝固能が亢進することで知られている. そこで, RAの特異性を見出すため, それぞれの臨床所見と組織像を示す間質性肺炎(NSIP, UIP)各5例の生検肺組織(日赤医療センター病理部よりの提供)を用いて, TM, vWf, CD31(PECAM)(内皮マーカー), fibrinogen, Ki-67の抗体でABC免疫ペルオキシダーゼ法を実施した. その結果, 肺胞壁の単位面積に出現するKi-67陽性の増殖期の細胞は, RAで最も高頻度に出現し内皮細胞にも認められた. NSIPにも出現を認めたが, 上皮とマクロファージが主体をなしUIPではほとんど陰性であった. TMはRA, NSIPでしばしば保持されておりフィブリンの析出も明らかであったが, UIPはvWfにのみ陽性を示した. RAは肥厚した肺胞壁に毛細血管の二重構造(dual stranded structure)を形成し, NSIPはTM/vWfのドーナツ状分布と内腔の狭窄が特徴的であった. それぞれの肺胞毛細血管における免疫組織学的リモデリングは, その肺胞壁線維化の発症機序に深く関与すると推察された.
ISSN:1345-4676