転移性陰茎腫瘍による持続勃起症 (Malignant priapism) の異なる治療経過の2症例

「要旨」 Malignant priapismは悪性疾患に伴う虚血性持続勃起症で, 今回異なる経過をたどった2症例を経験したので報告する. 【症例1】70代男性. 肺扁平上皮癌, 多発骨転移に対して緩和ケアの方針であったが経過中に陰茎の疼痛および持続勃起症を認め当科紹介となった. 虚血性持続勃起症に対し, phenylephrineの海綿体注射施行後も持続勃起は改善しなかった. しかし, この時点で予後1か月未満の状態であったため鎮痛薬による疼痛コントロールを継続し, 当科紹介から5日後に転院先で永眠された. 【症例2】60代男性. 陰茎痛で近隣泌尿器科より当科紹介. MRIでは陰茎海綿体に多...

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Published in日本性機能学会雑誌 Vol. 38; no. 3; pp. 243 - 248
Main Authors 村中一平, 小林皇, 豊田朋弘, 萬谷和香子, 岡部洸, 野藤誓亮, 橋本浩平, 田中俊明, 舛森直哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本性機能学会 30.12.2023
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ISSN1345-8361

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Summary:「要旨」 Malignant priapismは悪性疾患に伴う虚血性持続勃起症で, 今回異なる経過をたどった2症例を経験したので報告する. 【症例1】70代男性. 肺扁平上皮癌, 多発骨転移に対して緩和ケアの方針であったが経過中に陰茎の疼痛および持続勃起症を認め当科紹介となった. 虚血性持続勃起症に対し, phenylephrineの海綿体注射施行後も持続勃起は改善しなかった. しかし, この時点で予後1か月未満の状態であったため鎮痛薬による疼痛コントロールを継続し, 当科紹介から5日後に転院先で永眠された. 【症例2】60代男性. 陰茎痛で近隣泌尿器科より当科紹介. MRIでは陰茎海綿体に多発結節を認め, CTでは膵臓癌多発肝転移の所見であった. 当科紹介から2ヶ月後には持続勃起症の状態となり, 疼痛コントロールのために亀頭・海綿体シャント造設術(Ebbehoj法), 陰茎生検を施行. 生検の病理結果はadenocarcinomaで, 膵癌の陰茎転移による虚血性持続勃起症の診断となった. シャント術後疼痛はnumerical rating scale(NRS)1/10まで改善. 化学療法は4コース施行されたが病勢は進行し, シャント術後約5か月で永眠された. 悪性腫瘍の陰茎転移は予後不良であり, 患者の全身状態を考慮して適応を検討する必要がある.
ISSN:1345-8361