外科手術における同種血輸血の推移

「目的」血液製剤の適正使用は, 善意の献血を無駄にせず有効に利用するのみならず, 輸血による副作用・合併症などを回避する上でも適確に実施されなければならない問題である. 術前の同種血準備量および使用量の適正化における問題点を明らかにすることを目的として, 外科手術における同種血輸血の推移を検討した. 「対象・結果」当院における1988年6月から1998年5月までの10年間に行われた外科手術を対象とした. 同種血輸血は各診療科とも減少傾向を示し198年には手術1000件あたり約700単位減少した. また, これらの同種血輸血使用量減少の背景には, 手術を行う執刀医の技量の向上, 同種血輸血による...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 46; no. 2; p. 230
Main Authors 井上寛之, 上野裕美, 笹田裕司, 小森浩美, 辻肇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2000
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ISSN0546-1448

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Summary:「目的」血液製剤の適正使用は, 善意の献血を無駄にせず有効に利用するのみならず, 輸血による副作用・合併症などを回避する上でも適確に実施されなければならない問題である. 術前の同種血準備量および使用量の適正化における問題点を明らかにすることを目的として, 外科手術における同種血輸血の推移を検討した. 「対象・結果」当院における1988年6月から1998年5月までの10年間に行われた外科手術を対象とした. 同種血輸血は各診療科とも減少傾向を示し198年には手術1000件あたり約700単位減少した. また, これらの同種血輸血使用量減少の背景には, 手術を行う執刀医の技量の向上, 同種血輸血による副作用の認識, そして自己血輸血の普及があり, ’95年6月以降は自己血輸血の急激な増加が認められた. その要因として同意書の義務化や日赤血によるHIV感染などによる患者の輸血に対する意識も変わってきたことが影響していると考えられた. 特に98年においては, 全輸血量の43.6%を自己血が占めるに至った. また, 自己血を採取せずに同種血輸血を行った症例について輸血単位数の推移を見ると, 4単位以下の症例が52.2%から64.3%と増加し, また10単位以上の大量輸血は13.4%から9.7%に減少した. 4単位以下の症例については自己血で置き換えることが可能な症例も含まれていたと思われ, 自己血を採取することにより更なる同種血輸血を回避出来ると考えられた. ’97年6月から198年5月においては, 同種血輸血の減少に伴い, 術前の血液準備状況にも変化が現れ, MSBOSによる手術は年々減少し, 198年においてはT&SとT&S+自己血での手術が全例の68.8%を占めた. (結語)10年間で同種血輸血は減少傾向を示し, 今後とも一層の同種血輸血の減少が示唆された.
ISSN:0546-1448