塩酸トリエンチンにて加療中に鉄芽球性貧血を生じたWilson病の1例

【はじめに】銅キレート薬である塩酸トリエンチンは, Wilson病における二次選択薬である. 神経症状に対して優れた治療効果を有しており, D-ペニシラミンに比べ副作用が少ないのが魅力である. 今回我々は塩酸トリエンチンにて加療中, 鉄芽球性貧血を発症した肝神経型Wilson病の1例を経験したので報告する. 【症例】26歳男性. 25歳時より手指のしびれ振戦構語障害が出現した. 血清銅セルロプラスミン低値および尿中銅排泄量の増加を認めWilson病と診断された. 塩酸トリエンチンを用いて治療を開始し, 神経症状は徐々に改善した. しかし次第に全身倦怠感易疲労感が強く見られた. 治療開始3ヵ月後...

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Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 15; no. 3; p. 297
Main Authors 小田優子, 中園宏紀, 竹下由紀子, 山口之利, 清水教一, 青木継稔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 01.10.2004
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ISSN0916-717X

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Summary:【はじめに】銅キレート薬である塩酸トリエンチンは, Wilson病における二次選択薬である. 神経症状に対して優れた治療効果を有しており, D-ペニシラミンに比べ副作用が少ないのが魅力である. 今回我々は塩酸トリエンチンにて加療中, 鉄芽球性貧血を発症した肝神経型Wilson病の1例を経験したので報告する. 【症例】26歳男性. 25歳時より手指のしびれ振戦構語障害が出現した. 血清銅セルロプラスミン低値および尿中銅排泄量の増加を認めWilson病と診断された. 塩酸トリエンチンを用いて治療を開始し, 神経症状は徐々に改善した. しかし次第に全身倦怠感易疲労感が強く見られた. 治療開始3ヵ月後の検査にてHgb7.29/dL, MCV68.1fL, MCHC34.7%と小球性正色素性貧血を認めた. Fe100μg/dL, フェリチン785ng/mLと血清鉄貯蔵鉄は減少していなかった. 鉄の利用障害を考え骨髄穿刺を行ったところ, 骨髄鉄染色にて陽性率78%環状鉄芽球を多数認めたため鉄芽球性貧血と診断した. 塩酸トリエンチン投与により生じた可能性を考えD-ペニシラミンに変更し, 貧血の改善を認めた.
ISSN:0916-717X