硬組織再生誘導
細胞が分化するためには, その細胞のおかれている環境が重要であることは良く知られている. しかし, その環境の何が実際に細胞の分化を調節しているかについては不明な点が多い. そこで, 我々は硬組織細胞を効率的に分化誘導させることを目的に, 細胞分化に及ぼす環境の影響について研究を行った. ケースウェスタンリザーブ大学スケレタルリサーチセンターでは, H-2Kb-tsA58遺伝子導入マウスから数種類の歯髄由来細胞のクローニングを行っていて, 私もその研究に参加した. クローン細胞の中から, 線維芽細胞学のPC1, 増殖が活発なPC8, 2相性を示すPC14の特性について研究を行った. これらの細...
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| Published in | Journal of Hard Tissue Biology Vol. 13; no. 3; p. 139 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
硬組織再生生物学会
01.12.2004
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1341-7649 |
Cover
| Summary: | 細胞が分化するためには, その細胞のおかれている環境が重要であることは良く知られている. しかし, その環境の何が実際に細胞の分化を調節しているかについては不明な点が多い. そこで, 我々は硬組織細胞を効率的に分化誘導させることを目的に, 細胞分化に及ぼす環境の影響について研究を行った. ケースウェスタンリザーブ大学スケレタルリサーチセンターでは, H-2Kb-tsA58遺伝子導入マウスから数種類の歯髄由来細胞のクローニングを行っていて, 私もその研究に参加した. クローン細胞の中から, 線維芽細胞学のPC1, 増殖が活発なPC8, 2相性を示すPC14の特性について研究を行った. これらの細胞は活発に基質を形成して, 石灰化を引き起こし, DSPPの遺伝子を発現することから象牙芽細胞に分化する能力を有しているものと考えられる. 帰国後も更にこの研究を続け, これらの細胞に対して軟骨細胞の培養方法であるペレットカルチャーを行うと軟骨基質と同様のメタクロマジーを示し, タイプIIコラーゲンが形成されることを見出した. 軟骨への分化は他の数種類の歯髄由来細胞にも認められたため, 歯髄細胞は軟骨細胞に分化する能力を同時に有していることが明らかになった. これらの研究成果から, 細胞の分化を左右するのは, 能力だけでなく, 細胞が何とどのように接触しているかが, 重要ではないかと思われる. 軟骨の場合は細胞同士が接触し, 培養液やガスの浸潤が抑制されていることが重要であると考えられる. 我々は以前から, 骨の細胞外マトリックスが, 筋肉内や皮下で骨を誘導する機構について研究を行い, 細胞を誘導する重要な因子はそれぞれの組織に存在する細胞外マトリックスであると考えてきた. そこで, 象牙質の細胞外マトリックスを用いて, 歯乳頭細胞の象牙芽細胞への分化誘導を試みた結果, 象牙質の形成を観察した. これらの研究成果から細胞分化に及ぼす環境について考察する. |
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| ISSN: | 1341-7649 |