肝虚血再灌流モデルによる急性肝不全時のフルマゼニルによる中枢ドパミン神経系の改善

目的:フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)が肝性脳症を軽減したという臨床報告がいくつかある. 肝性脳症の作用機序として中枢モノアミン神経活動の変化が示唆されている. 本研究では, 中枢モノアミン神経活動に対するフルマゼニルの効果をラット急性肝不全モデルを用いて評価した. 方法:雄性ウィスターラットをそれぞれ6匹ずつ3群(偽手術群, 肝虚血群, 肝虚血フルマゼニル群)に分けた. イソフルレン麻酔下で, 左門脈の血流を90分間遮断することにより急性肝不全を惹起した. 虚血中に脳定位固定装置を用いてマイクロダイアリシスプローブを右線条体に挿入し固定した. 偽手術群には生理食塩水, 肝虚血群に...

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Published in蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 191
Main Authors 三世敏彦, 足立尚登, 新井達潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 10.10.2003
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ISSN0288-4348

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Summary:目的:フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)が肝性脳症を軽減したという臨床報告がいくつかある. 肝性脳症の作用機序として中枢モノアミン神経活動の変化が示唆されている. 本研究では, 中枢モノアミン神経活動に対するフルマゼニルの効果をラット急性肝不全モデルを用いて評価した. 方法:雄性ウィスターラットをそれぞれ6匹ずつ3群(偽手術群, 肝虚血群, 肝虚血フルマゼニル群)に分けた. イソフルレン麻酔下で, 左門脈の血流を90分間遮断することにより急性肝不全を惹起した. 虚血中に脳定位固定装置を用いてマイクロダイアリシスプローブを右線条体に挿入し固定した. 偽手術群には生理食塩水, 肝虚血群にも生理食塩水, 肝虚血フルマゼニル群にはフルマゼニル(1mg/kg)を血流再開1, 6, 24時間後に, 腹腔内投与した. また, マイクロダイアリシスプローブよりそれぞれの薬物投与後30分間, 灌流液を採取し, モノアミンとその代謝物を測定した. また, 手術24時間後に血液を採取し, 肝酵素を測定した. 結果:90分間の肝虚血により重症の肝不全が誘発され, 肝酵素が術後24時間後2つの虚血群で著明に増加した. フルマゼニルはこの増加に影響をおよぼさなかった. フィシャー比も虚血群で明らかに低かった. また急性肝不全により24時間後の自発運動活動が砥下した. フルマゼニル投与によりその活動の低下が回復した. マイクロダイアリシスによる分析ではドパミンの代謝物である3, 4-dihydroxy phenylacetic acid(DOPAC)の細胞外液濃度が手術群で39%減少した. また, ドパミン値に変化はなかった. フルマゼニルの腹腔内に投与によりDOPAC減少抑制された. 代謝物/ドパミン比は神経活動を示すので, この改善は肝不全により抑制されたドパミン神経活動の改善を示す. 結論:フルマゼニルによるドパミン神経活動の改善がこの薬物による肝性脳症改善の一要因であると思われる.
ISSN:0288-4348