重症心身障がい児・者に対する外科診療の現状と展望 - 呼吸器・消化器外科疾患を中心に
「抄録」【目的】重症心身障がい児・者に発生した外科的疾患の診療遂行はきわめて困難なことが多い. 今回, 重症心身障がい児・者の外科診療を関連医療施設に展開し良好な結果を得たので, 治療成績を向上させる要因について考察する. 【対象と方法】過去10年間(2005-2015)に重症心身障がい児・者施設に入所した107人の病歴から重度の呼吸器および消化器疾患のため外科的診療を受けた症例を抽出し, それらの診療内容を調査し, 治療成績に関する要因について検討した. 【結果】107例中24例が呼吸器および消化器疾患の重症病態ために36件の手術(喉頭気管分離術5, 気管切開術7, 胃瘻造設術12, 噴門形...
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Published in | 聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 44; no. 2; pp. 83 - 89 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
聖マリアンナ医科大学医学会
01.08.2016
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ISSN | 0387-2289 |
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Summary: | 「抄録」【目的】重症心身障がい児・者に発生した外科的疾患の診療遂行はきわめて困難なことが多い. 今回, 重症心身障がい児・者の外科診療を関連医療施設に展開し良好な結果を得たので, 治療成績を向上させる要因について考察する. 【対象と方法】過去10年間(2005-2015)に重症心身障がい児・者施設に入所した107人の病歴から重度の呼吸器および消化器疾患のため外科的診療を受けた症例を抽出し, それらの診療内容を調査し, 治療成績に関する要因について検討した. 【結果】107例中24例が呼吸器および消化器疾患の重症病態ために36件の手術(喉頭気管分離術5, 気管切開術7, 胃瘻造設術12, 噴門形成術6, 腸閉塞解除術3, ほか3)を受けた. 術後合併症は, 腸閉塞術後の腸閉塞再発1例, 胃食道逆流防止術後, ならびに喉頭気管分離術+噴門形成術+胃瘻造設術後胃食道逆流症の再発各1例と, 再造設を要した胃瘻造設術後の難治性皮膚糜爛形成2例であった. 術後早期死亡はなかった. 手術を回避できた外科的治療および処置を受けた症例は20例で, それらのうち反復性腸閉塞症の1例が搬送先医療施設で手術待機中に敗血症による播種性血管内凝固症候群で死亡した. 【考察とまとめ】重症心身障がい児・者の外科的疾患・病態は多岐にわたり, 重度呼吸器・消化器外科疾患のみでも全入所児・者の41%に達した. 症例の多くが緊急対応を要したが, 施設間連携を密に行った結果, 移送および治療は迅速に行われ, 死亡の1例以外は早期に施設内での日常生活に復帰できた. |
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ISSN: | 0387-2289 |