含糖酸化鉄注射液の長期投与でFGF23関連低リン血症性骨軟化症を来たしたクローン病の1例

「抄録」症例は50歳代, 男性. クローン病で2年前に右半結腸切除術, 小腸部分切除を施行. 術後に他院にてアダリムマブを導入され, クローン病は臨床的寛解の状態であった. 4か月前より下肢を中心とした疼痛が出現した. アダリムマブによる薬剤起因性ループスあるいは腸炎性関節炎を疑い, 2か月前よりアダリムマブ投与を中止し, プレドニゾロンの内服を開始するも改善を認めなかった. 血液検査にて, 低リン血症と高アルカリフォスファターゼ血症を認め, 精査治療目的で当院に紹介入院となった. 骨塩定量検査にて骨密度の低下を, 骨シンチグラフィーで疼痛を認める骨への多発取り込みを認め, 骨軟化症と診断した...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 43; no. 2; pp. 119 - 126
Main Authors 冨田晃生, 石井学, 合田杏佑, 葉祥元, 福嶋真弥, 平井伸典, 大澤元保, 中藤流以, 村尾高久, 藤田穣, 松本啓志, 佐藤元紀, 宗友厚, 塩谷昭子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 01.12.2017
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ISSN0386-5924

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Summary:「抄録」症例は50歳代, 男性. クローン病で2年前に右半結腸切除術, 小腸部分切除を施行. 術後に他院にてアダリムマブを導入され, クローン病は臨床的寛解の状態であった. 4か月前より下肢を中心とした疼痛が出現した. アダリムマブによる薬剤起因性ループスあるいは腸炎性関節炎を疑い, 2か月前よりアダリムマブ投与を中止し, プレドニゾロンの内服を開始するも改善を認めなかった. 血液検査にて, 低リン血症と高アルカリフォスファターゼ血症を認め, 精査治療目的で当院に紹介入院となった. 骨塩定量検査にて骨密度の低下を, 骨シンチグラフィーで疼痛を認める骨への多発取り込みを認め, 骨軟化症と診断した. 血清のfibroblast growth factor 23(FGF23)が175pg/mlと高値であり, 入院前まで定期的に使用されていた含糖酸化鉄注射液による, FGF23関連低リン血症性骨軟化症と診断した. 含糖酸化鉄注射液投与を中止し, リン製剤とビタミンD製剤の投与を開始したところ, 徐々に低リン血症と高アルカリフォスファターゼ血症の改善を認めた. その後の経過は良好で, FGF23値は徐々に低下を示し, 下肢を中心とした疼痛は軽快し, 退院した. 長期的に含糖酸化鉄注射液を投与する場合は, FGF23関連低リン血症の早期発見のため, 血中リン濃度を定期的に測定する必要がある.
ISSN:0386-5924