服薬支援が不可欠であった統合失調症合併イソニアジド耐性結核の1例

「要旨」: 60歳代女性. 統合失調症であったが通院は不規則であった. R病院で肺結核と診断されたが治療に拒否的であった. 保健所医師と保健師が説得を繰り返した. 当初は喀痰塗抹陰性であったが1カ月後に塗抹陽性となり, 配偶者の理解のもと感染症病床を有するM病院に医療保護入院と感染症法による勧告入院の両面で入院となった. 入院先で統合失調症および結核の治療が進み地域医療に移行することになった. 保健所が中心となってT精神科診療所, 結核治療に豊富な経験をもつS病院と医療連携を行い, 結核医療を確保した. また, 服薬支援においては保健師, 看護師の訪問DOTSのみならず, 訪問看護ステーション...

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Published in結核 Vol. 99; no. 4; pp. 91 - 94
Main Authors 長沼孝至, 横山由衣, 森千珠, 吉川秀夫, 北村淳子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.05.2024
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ISSN0022-9776

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Summary:「要旨」: 60歳代女性. 統合失調症であったが通院は不規則であった. R病院で肺結核と診断されたが治療に拒否的であった. 保健所医師と保健師が説得を繰り返した. 当初は喀痰塗抹陰性であったが1カ月後に塗抹陽性となり, 配偶者の理解のもと感染症病床を有するM病院に医療保護入院と感染症法による勧告入院の両面で入院となった. 入院先で統合失調症および結核の治療が進み地域医療に移行することになった. 保健所が中心となってT精神科診療所, 結核治療に豊富な経験をもつS病院と医療連携を行い, 結核医療を確保した. また, 服薬支援においては保健師, 看護師の訪問DOTSのみならず, 訪問看護ステーションのサービスも利用して服薬支援を行った. 精神疾患と感染症に対する保健活動を同じ保健所で行う特別区保健所の大きな利点を生かして, 服薬拒否などの症状が出たときは各部署が緊密に連携することにより280日間に及ぶ治療を完了できた. 統合失調症などの複雑な結核患者の場合には社会的な資源の活用が重要であり, その資源の活用には日々の地道な地域活動と豊富な経験, 専門的知見を有し, かつ実務を担える保健所医師, 保健師, 結核事務職員の育成が重要と考えられた.
ISSN:0022-9776