大分県におけるCOVID-19拡大が与えた新規肺結核患者への影響

要旨: 〔目的〕COVID-19拡大後, 多くの地域で結核の新規届け出数が一定期間減少した. 受診控えや健診機会の減少が影響したことが考えられるが, 診断の遅れと, それによって重症後に発見される症例の増加が懸念される. 本研究では, 大分県のCOVID-19流行が肺結核の診断の遅れ, および診断時の臨床像に与えた影響を明らかにすることを目的とする. 〔方法〕流行前として2019年6~12月, 流行後として2020年同月に, 西別府病院に入院した肺結核患者を対象とした. 両観察期間において, 患者の診断までの期間, および診断時の臨床背景を比較した. 〔結果〕流行前46名, 流行後29名が対象...

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Published in結核 Vol. 97; no. 2; pp. 41 - 44
Main Authors 藤島宣大, 山末まり, 小宮幸作, 瀧川修一, 宮崎英士, 平松和史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本結核・非結核性抗酸菌症学会 15.03.2022
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ISSN0022-9776

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Summary:要旨: 〔目的〕COVID-19拡大後, 多くの地域で結核の新規届け出数が一定期間減少した. 受診控えや健診機会の減少が影響したことが考えられるが, 診断の遅れと, それによって重症後に発見される症例の増加が懸念される. 本研究では, 大分県のCOVID-19流行が肺結核の診断の遅れ, および診断時の臨床像に与えた影響を明らかにすることを目的とする. 〔方法〕流行前として2019年6~12月, 流行後として2020年同月に, 西別府病院に入院した肺結核患者を対象とした. 両観察期間において, 患者の診断までの期間, および診断時の臨床背景を比較した. 〔結果〕流行前46名, 流行後29名が対象となった. 流行前後で発症から受診までの期間に差はなかったが, 受診から診断までの期間は流行後に有意に延長していた. 流行前後の患者背景において, 排菌量, 呼吸不全, 陰性化までの期間, 入院中死亡の割合に差はなかった. 〔結論〕大分県では, 流行後に受診後から診断までの期間が延長した. 患者の重症度には差は認めなかったが, 今回の研究では観察期間が限られる. 中長期的には重症化して発見される懸念もあり, より一層の慎重な肺結核の鑑別が重要と考えられる.
ISSN:0022-9776