麻酔の森に迷い込んで

「1. 麻酔とは何か」医学生の頃, 麻酔薬のメカニズムは不明で, 全ての患者が麻酔から100%覚醒する保証はなく, 麻酔メカニズムの解明はノーベル賞に相当するテーマだと聞いた. その時, メカニズム不明な麻酔薬を用いて麻酔管理をしなくてはならない麻酔科医に, 軽い同情の念を抱いた. 卒後, 母校の脳神経外科学教室に入局し, 市中病院での麻酔科研修に派遣され, 初日にハロタンによる扁桃摘出術の小児麻酔を担当した. 指導医から血圧と脈拍を指標に, ハロタンの吸入濃度を0.1-0.2%ずつ調節するよう指示された. 麻酔をかけるという行為が持つ「怖さ」を感じつつ, 吸入濃度を上げると「麻酔が深く」なり...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in信州医学雑誌 Vol. 72; no. 1; pp. 5 - 6
Main Author 川真田樹人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 10.02.2024
Online AccessGet full text
ISSN0037-3826

Cover

More Information
Summary:「1. 麻酔とは何か」医学生の頃, 麻酔薬のメカニズムは不明で, 全ての患者が麻酔から100%覚醒する保証はなく, 麻酔メカニズムの解明はノーベル賞に相当するテーマだと聞いた. その時, メカニズム不明な麻酔薬を用いて麻酔管理をしなくてはならない麻酔科医に, 軽い同情の念を抱いた. 卒後, 母校の脳神経外科学教室に入局し, 市中病院での麻酔科研修に派遣され, 初日にハロタンによる扁桃摘出術の小児麻酔を担当した. 指導医から血圧と脈拍を指標に, ハロタンの吸入濃度を0.1-0.2%ずつ調節するよう指示された. 麻酔をかけるという行為が持つ「怖さ」を感じつつ, 吸入濃度を上げると「麻酔が深く」なり, 下げると「麻酔が浅く」なることを実感し, 手術が終了し抜管すると, 患児が泣き出しホッとした.
ISSN:0037-3826