急性リンパ性白血病で両下肢不全麻痺を併発した患者の褥瘡ケア

<はじめに>原病や化学療法により免疫力が低下している患者が多い当病棟では, 褥瘡が発生すると治癒しにくいという印象があった. 今回, 易感染状態でDESIGN14点褥瘡を形成した両下肢不全麻痺の患者に対し, 褥瘡対策チーム, 病棟スタッフが協働して関わり, 回復した症例を経験したので報告する. <研究目的>褥瘡が回復に至った事例を通し, 患者教育, 褥瘡対策チームとの関わり, ケアを振り返ることで, スタッフの意識の変化と今後の褥瘡ケアについて検討する. <倫理的配慮>写真撮影や成果発表において個人が特定できないよう配慮することを約束し同意を得た. <...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 575
Main Authors 前島ゆかり, 星葉子, 長谷川幸代, 天貝恵子, 宮本佳代子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 01.09.2005
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ISSN0468-2513

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Summary:<はじめに>原病や化学療法により免疫力が低下している患者が多い当病棟では, 褥瘡が発生すると治癒しにくいという印象があった. 今回, 易感染状態でDESIGN14点褥瘡を形成した両下肢不全麻痺の患者に対し, 褥瘡対策チーム, 病棟スタッフが協働して関わり, 回復した症例を経験したので報告する. <研究目的>褥瘡が回復に至った事例を通し, 患者教育, 褥瘡対策チームとの関わり, ケアを振り返ることで, スタッフの意識の変化と今後の褥瘡ケアについて検討する. <倫理的配慮>写真撮影や成果発表において個人が特定できないよう配慮することを約束し同意を得た. <研究方法>期間:2004年5月17日褥瘡発生日~7月27日褥瘡治癒日まで 分析方法:褥瘡の状態をDESIGNにて評価 <事例紹介>61歳, 女性. 2002年12月急性リンパ性白血病を発症. 2003年3月両下肢不全麻痺が出現, 2004年3月に再発し入院, 化学療法により二度目の寛解となる. 5月の外泊中に仙骨部へ褥瘡を形成. 抗癌剤を内服. 膀胱直腸障害の為排泄は全介助, フォーリーカテーテルを留置. 頻回な下痢症状により, 1日5~6回のオムツ交換を必要とした. <看護の実際, 経過>当初は, 仙骨部へ発赤を形成した程度であったが, 両下肢不全麻痺や低栄養状態が要因となり, 9日後DESIGN8点の褥瘡となった. 褥瘡対策チームに依頼し, 処置方法, 体圧分散寝具の選択, 栄養面での介入をした. 寝具は薄型エアーマットレスから高機能・圧切替型エアーマットレスへ変更した. 栄養面では, 患者と相談してヨーグルトなどを補食とした. 週に一度の褥瘡対策チームによる回診を受け, デジタルカメラで褥瘡部を撮影し, 患者本人・夫と状態を共有した. 更に毎日のケアカンファレンスで褥瘡の状態, 処置方法について情報共有・評価をした. ケアは洗浄から実施するため時間を要し, 側臥位を保つ患者の負担にもなっていた. また, 化学療法による副作用のため下痢症状が続き, 褥瘡部に便が入り込み, 1日6回程のケアを必要としたが, 夜間帯も同一のケアを実施した. 15日後DESIGN14点となった為, 患者へ再度除圧の必要性を説明しベッドギャッジアップ30度まで, 座位90度の保持, 2時間毎の体位変換を徹底した. 29日後, 栄養面の変化なく下痢症状は続いていたが, DESIGN6点に回復した. 50日後補食として微量栄養素補助飲料を1日1本開始しDESIGN4点, 瘢痕化となった. 71日後DESIGN2点に回復した. <考察>今回, 低栄養, 易感染状態は続いていたが, 感染を起こすことなく褥瘡がDESIGN14点から2点に減少した. この要因として, (1)早期に褥瘡対策チームに相談, ケアカンファレンスを活用しプライマリーナースを中心としたケアの統一と評価を行なったこと, (2)患者と共に褥瘡の状態を視覚的に評価でき目標を明確にしたこと, (3)患者自ら, 危険体位を理解し実施できたことが考えられる. これまでの褥瘡ケアでは, ケアの成果が得られずスタッフの疲弊に繋がっていた. しかし, 今回の事例を通して一人一人がケアの成果を実感したことで褥瘡ケアに対する意識の向上, スキルアップへと繋がったと推察する. <まとめ>今回, 私たちの関わりにより褥瘡が回復した. スタッフの褥瘡ケアに対する認識が高まり, やりがいや意欲への動機付けとなった. 今後も検討を重ね, 看護の質の向上へ繋げていきたい.
ISSN:0468-2513