脳科学的な診断技術の進歩
「I. はじめに」神経発達症(神経発達障害)は, 遺伝的かつ環境要因による, 神経回路の特異性に基づく神経障害である. 彼らの発達軌跡は多様で, 生活予後を予測することは実に難しい. 一方, 人類の発達において環境への適応は非常に重要である. 例えば, ネアンデルタール人における傍証によれば, 地球の気候変動が最も大きかった百万年前において, 人類の脳は最大規模な容積の増大をもたらしている. 昨今ではデジタル革命により引き起こされる急激な社会的環境変化の影響も無視できない. こうした社会的相互作用に与える要因も踏まえて環境に適応しようとする発達を読み解く視点が必要とされる. ヒトの心的機能は身...
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Published in | 児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 61; no. 3; pp. 258 - 262 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本児童青年精神医学会
01.06.2020
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ISSN | 0289-0968 |
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Summary: | 「I. はじめに」神経発達症(神経発達障害)は, 遺伝的かつ環境要因による, 神経回路の特異性に基づく神経障害である. 彼らの発達軌跡は多様で, 生活予後を予測することは実に難しい. 一方, 人類の発達において環境への適応は非常に重要である. 例えば, ネアンデルタール人における傍証によれば, 地球の気候変動が最も大きかった百万年前において, 人類の脳は最大規模な容積の増大をもたらしている. 昨今ではデジタル革命により引き起こされる急激な社会的環境変化の影響も無視できない. こうした社会的相互作用に与える要因も踏まえて環境に適応しようとする発達を読み解く視点が必要とされる. ヒトの心的機能は身体(遺伝子, 脳)と環境(他者, 社会, 文化)の複雑な相互作用の上に成り立ち, 生涯を通じて発達し続ける. 興味深いことに対人適応能力の発達は, 幼若期の経験に依存する可能性が高い. |
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ISSN: | 0289-0968 |