NAT陽性血を輸血されB型肝炎を発症した1例

福岡県赤十字血液センターでは昨年から原料血漿に核酸検査(NAT)を導入し, 陽性血に対応する血液が投与された疑いがある場合, 直ちに病院側に情報の提供を行ってきた. 当院は昨年6月にNAT検査でのみHBV陽性のMAP加赤血球が供給されたとの連絡を受け, この血液を投与された患者の追跡を行った. 症例:症例は81歳の女性で血液型はB(+), HCVキャリアーであった. 98年6月24日に心不全治療目的で400ml-MAP加赤血球1袋の輸血を受けた. 輸血前の血清でHBs(-)であった. その後の追跡で輸血後126日目の血清でHBs抗原が陽転し, 179日目にはHBe抗原が陽転化した. 175日目...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 46; no. 3; p. 348
Main Authors 二宗みのり, 宮下典子, 藤井フサ子, 中田弘, 稲葉頒一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.06.2000
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ISSN0546-1448

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Summary:福岡県赤十字血液センターでは昨年から原料血漿に核酸検査(NAT)を導入し, 陽性血に対応する血液が投与された疑いがある場合, 直ちに病院側に情報の提供を行ってきた. 当院は昨年6月にNAT検査でのみHBV陽性のMAP加赤血球が供給されたとの連絡を受け, この血液を投与された患者の追跡を行った. 症例:症例は81歳の女性で血液型はB(+), HCVキャリアーであった. 98年6月24日に心不全治療目的で400ml-MAP加赤血球1袋の輸血を受けた. 輸血前の血清でHBs(-)であった. その後の追跡で輸血後126日目の血清でHBs抗原が陽転し, 179日目にはHBe抗原が陽転化した. 175日目からALT値の上昇が見られ, 急性B型肝炎の疑いで入院となった. 187日目にALT値303と頂値を示し, 以後軽快した. HBs抗原は328日目に陰性となった. 高齢で心不全を持つ患者ではあったが, 肝炎症状と思われる黄疸や強い倦怠感は見られなかった. 以後, 現在まで1年以上経過したが, 特記すべき問題は見られていない.
ISSN:0546-1448