災害時における当院透析室の対応~7・13新潟豪雨および10・23新潟県中越地震を経験して
<はじめに>当院は新潟平野のほぼ中央に位置し, 199床(一般151床, 療養48床)の病床を有する総合病院である. 加えて, 同時透析50床の透析室があり, 平成17年4月現在約135人の慢性透析を実施している. 災害管理として, 火災を想定した避難訓練は年1回行なって来ていたが, 平成16年7月13日には「平成16年7月新潟・福島豪雨(以下7・13水害)」を, ついで10月23日には平成16年新潟県中越地震(以下10・23中越地震)をと, 2つの大きな自然災害を経験した. 7・13水害では透析患者を受け入れていただく側に, また10・23中越地震では受け入れる側となり, 幾多の...
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Published in | 日本農村医学会雑誌 Vol. 54; no. 3; p. 412 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本農村医学会
01.09.2005
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ISSN | 0468-2513 |
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Summary: | <はじめに>当院は新潟平野のほぼ中央に位置し, 199床(一般151床, 療養48床)の病床を有する総合病院である. 加えて, 同時透析50床の透析室があり, 平成17年4月現在約135人の慢性透析を実施している. 災害管理として, 火災を想定した避難訓練は年1回行なって来ていたが, 平成16年7月13日には「平成16年7月新潟・福島豪雨(以下7・13水害)」を, ついで10月23日には平成16年新潟県中越地震(以下10・23中越地震)をと, 2つの大きな自然災害を経験した. 7・13水害では透析患者を受け入れていただく側に, また10・23中越地震では受け入れる側となり, 幾多の経験をした. 今後の自然災害発生に備え, 各透析施設の具体的な参考の一つになればと考え, 2つの自然災害での当院の対応をまとめた. <7・13水害>7・13水害は同日を中心とした新潟県および福島県での局地的な豪雨によってもたらされ, 三条市内では五十嵐川の堤防決壊により大きな被害が生じた. 市内には当院を含め, 三つの透析施設があり, 浸水など直接的な被害はなかった. スタッフおよび患者・家族宅の被災があり, 患者126人の内水害被災は11名, 水害による入院9名, 避難所からの通院2名, ほか通院に支障があった方が多数いた. 最も深刻であったのが水源の原水が高濁度となって浄化能力が低下したことによる市内全域に渡る給水制限で, 翌14日からの透析実施が危ぶまれたが, 行政の対応による給水車による給水, 透析液量の減量, 時間の短縮などで対応し結果的には自院での透析が継続可能であった. また透析実施の見通しがつかないため近隣の透析施設と連絡を取り合い, 急な転院に備え一人ひとりのサマリーの整備, 緊急時連絡方法の確認などを行なった. また水処理装置のプレフィルターの汚れがひどく, 2回に渡って交換を必要とした. <10・23中越地震>中越地震は新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8(最大震度7)の直下型地震であり, 中越地方を中心に大きな被害があり, 医療機関でも多くの被害が生じた. 三条市は震度5を記録したが, 当院透析室では大きな被害は見られず, 透析への障害はなかったが, 震源地付近のいくつかの透析施設では透析が不可能であるとの情報が当日入った. 地震翌日24日は日曜日のため, 翌月曜日からの受け入れは未確定であったが, 25日の当院の透析患者に急遽連絡をとり, 24日のうちに34名の透析を行なった. その後新潟県厚生連や透析医会の災害情報ネットワークを介し, 長岡中央病院の透析患者を25日(32人), 26日(34人)の二日間受け入れた. 日曜の臨時透析でベッドが空けてあったため, 一日2クールで対応可能であった. また, ダイアライザーなどの必要物品は当院で用意し, 長岡中央病院からは両日スタッフ4名の付き添いがあり, 心身両面で患者管理を担っていただき, 大きな問題は生じなかった. 当初1週間の受け入れを想定し準備してが, 幸いこの2日間のみで患者受け入れは終了した. しかし余震も続くため, 約1週間は災害対策として, 勤務時間を変更し対応した. <まとめ>二つの災害を通し, 1.施設間・スタッフ間の普段からのコミュニケーション, 2.病院・患者間の双方向性の連絡体制, 3.行政を含む現地の対策本部との連絡, 4.インターネットなどの活用, 5.緊急時の水確保対策(井戸等)などが大切であると考えられた. |
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ISSN: | 0468-2513 |