MAP合成血による交換輸血後に呼吸性アシドーシスをきたした超低出生体重児の1例

交換輸血は新生児医療において欠くことのできない治療手技のひとつである. 交換輸血の目的は血中に増加した有害物質の除去と, 欠乏した血球あるいは血漿成分の補充である. 通常, 循環血液量の2倍程度の量で施行するため, 造血因子の生産能が未熟な新生児では新鮮血が用いられる. しかし, 緊急時においては新鮮血の確保が困難であるため, 我々はやむなくMAP血と凍結新鮮血漿を合成(以下合成血)して使用する. 今回我々は, 合成血による交換輸血後に呼吸性アシドーシスをきたした超低出生体重児の症例を経験したので報告する. 【症例】症例ME:在胎24週6日, 出生体重440g, 女児. (妊娠分娩歴)母親28...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 2; p. 247
Main Authors 白川嘉継, 白幡聡
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1997
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ISSN0546-1448

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Summary:交換輸血は新生児医療において欠くことのできない治療手技のひとつである. 交換輸血の目的は血中に増加した有害物質の除去と, 欠乏した血球あるいは血漿成分の補充である. 通常, 循環血液量の2倍程度の量で施行するため, 造血因子の生産能が未熟な新生児では新鮮血が用いられる. しかし, 緊急時においては新鮮血の確保が困難であるため, 我々はやむなくMAP血と凍結新鮮血漿を合成(以下合成血)して使用する. 今回我々は, 合成血による交換輸血後に呼吸性アシドーシスをきたした超低出生体重児の症例を経験したので報告する. 【症例】症例ME:在胎24週6日, 出生体重440g, 女児. (妊娠分娩歴)母親28歳, 不妊症治療により妊娠. 産科検診時に羊水過少と胎児心拍低下を指摘され, 緊急帝王切開により出生. アブガースコアは1分3点, 5分4点と新生児仮死が認められた. (出生後経過)ただちに挿管し, 新生児集中治療室に入院した. 呼吸障害は重度で, 人工呼吸管理下に呼吸管理を継続することとした. また, 出生当日の頭部超音波所見から, 右側脳室に脳室拡大を伴う脳室内出血が認められ, 点滴刺入部からの出血や, 肺出血も持続するため凝固因子補充の目的で新鮮凍結血漿を投与した. しかし, 出血傾向の改善は認められず, 1, 7, 10生日に交換輸血を施行し, その後出血傾向は軽渡した. 交換輸血血液は, 1, 10生日は院内採血の新鮮血を, 7生日は合成血を使用した. 合成血による交換輸血後, 全身は蒼白色となり, 動脈血ガス分析から呼吸性アシドーシスの所見が得られた. 70分後, アシドーシスは改善し, 患児の経過には特に問題を残すことはなかった. 患児は, 後に脳室内出血後の水頭症をきたし, 脳室腹腔内シャント術を施行後, 172生日退院した. 【孝察】今回使用した合成血中の二酸化炭素分圧は93.6mmHgと高圧であった. 呼吸障害を合併する超低出生体重見では, 肺からの二酸化炭素の呼出が充分ではなく, 合成血による交換輸血では何らかの配慮が必要である.
ISSN:0546-1448