(シンポジウムI-4)摂食・嚥下リハの教育をめぐって-「歯科衛生士教育」の現状とこれから

今, まさに歯科衛生士教育は変換期を迎えている. 摂食・嚥下リハビリテーションでは, 疾患や機能レベルの対応に終始するのでなく, 対象者全体に働きかける包括的なアプローチが不可欠であり, 専門職チームの専門性と多専門職種の包括性, 総合性に立ったチームワークが必須である. このためには, 多くの職種が関わる摂食・嚥下リハビリテーションの医療領域において, チーム医療を進めていく上での基本として, 協同しあう多職種同志の相互理解が肝要である. これらの活動のために必要な教育が何か, 今, 何が必要かを常に意識し, 取り組むことは, 教育に携わる者にとっての課題である. よって, 卒前教育について...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 10; no. 3; pp. 292 - 293
Main Author 吉田直美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 31.12.2006
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ISSN1343-8441

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Summary:今, まさに歯科衛生士教育は変換期を迎えている. 摂食・嚥下リハビリテーションでは, 疾患や機能レベルの対応に終始するのでなく, 対象者全体に働きかける包括的なアプローチが不可欠であり, 専門職チームの専門性と多専門職種の包括性, 総合性に立ったチームワークが必須である. このためには, 多くの職種が関わる摂食・嚥下リハビリテーションの医療領域において, チーム医療を進めていく上での基本として, 協同しあう多職種同志の相互理解が肝要である. これらの活動のために必要な教育が何か, 今, 何が必要かを常に意識し, 取り組むことは, 教育に携わる者にとっての課題である. よって, 卒前教育について多職種間で現状について情報提供しあい, 共有し, 今後を検討することが重要であることは, 言うまでもない. もちろん, 卒後の活動の場が確定していない段階での教育-卒前教育と, 現実にそのかかわりを行っているあるいは, その志向性がある段階での教育-卒後教育を共に考える必要があり, それぞれのゴールは異なる. そして, 超高齢者社会を迎え, 人口減少にある日本において, 保健医療福祉領域の人材養成は, 教育の見直しならびに修正が年々必要となる. これらのことは, 変革期を迎えた歯科衛生士教育においても同様である. 毎年約7,000名の歯科衛生士が輩出されており, 平成18年3月の歯科衛生士国家試験合格者数は, 7,012名であった. 近年, 歯科衛生士養成指定規則の改正に伴い, 全ての歯科衛生士養成校は, 平成22年までに3年制以上の教育年限になることが決定している. 平成18年4月現在で, 歯科衛生士養成機関数は140校を超える. そのうち4年制が4校であり, 3年制へ移行したものは50校である. 今後, 4年制学科数のさらなる増加が見込まれる. また, この改正にともない, カリキュラムの大綱化され, 各養成機関で, 独自の教育特徴をだせるようになった. 摂食・嚥下リハビリテーションの教育を含め, 歯科衛生士教育全体の変革は, 大きな検討課題である. 本校の歯科衛生士教育は, 2004年に2年制専門学校教育から, 4年制の大学教育へ移行し, 本学科は, 開設から3年目に突入した. 摂食・嚥下リハビリテーションと直接関連する内容の科目が新規導入され, 今秋以降, 開講予定の科目は, 顎口腔機能訓練法15時間, 顎口腔リハビリテーション論15時間, 顎口腔リハビリテーション実習15時間などがある. 歯科衛生士は, いわゆる診断は行わないが, 専門職として責任ある自律行動により, チームの一員として機能するために, 判断力をつけ, 基本的な知識・技術を修得することを目的に実施される予定である. 今回, 本学科の前身である歯科衛生士学校ならびに, 本学科における摂食・嚥下リハビリテーションに関連した教育を例に挙げ, 歯科衛生士教育におけるの卒前教育の現状を紹介する.
ISSN:1343-8441