発達障害と虐待の脳科学

児童虐待は実に年間59,000件以上 (平成23年度) も発生しており, とどまるところを知らない. 児童虐待には殴る, 蹴るといった身体的虐待や性的虐待だけでなく, 暴言による虐待, 不適切な養育環境やネグレクト, 両親間の家庭内暴力 (ドメスティクバイオレンス:DV) を目撃させる行為など心理的虐待も含まれる. 子どもたちが受けるトラウマの大きさは, 非日常的な自然災害であれ日常的な親からの虐待であれ, 計り知れないものがある. こうした児童虐待は単回性か慢性的かの違いはあれ, トラウマとして子どもたちに重篤な影響を与え, その発達を傷害するように働くことがある. そしてそれは, 従来の“...

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Published in生理心理学と精神生理学 Vol. 31; no. 2; p. 55
Main Author 友田明美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理心理学会 31.08.2013
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ISSN0289-2405

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Summary:児童虐待は実に年間59,000件以上 (平成23年度) も発生しており, とどまるところを知らない. 児童虐待には殴る, 蹴るといった身体的虐待や性的虐待だけでなく, 暴言による虐待, 不適切な養育環境やネグレクト, 両親間の家庭内暴力 (ドメスティクバイオレンス:DV) を目撃させる行為など心理的虐待も含まれる. 子どもたちが受けるトラウマの大きさは, 非日常的な自然災害であれ日常的な親からの虐待であれ, 計り知れないものがある. こうした児童虐待は単回性か慢性的かの違いはあれ, トラウマとして子どもたちに重篤な影響を与え, その発達を傷害するように働くことがある. そしてそれは, 従来の“発達障害”の基準に類似した症状を呈する場合がある. 生命の危機に至らないケースでも, 被虐待児はうつ病を始めとする重い精神症状を患うことが多く, またそれは衝動的な子どもや薬物依存の増加といった社会問題とも関係している.
ISSN:0289-2405