ヒト赤血球膜における膜内粒子の分布と裏打ち構造の役割について

「緒言」哺乳類の赤血球膜は, 赤血球が比較的入手しやすいことや, 細胞小器官を全く含まないため形質膜の精製が容易であることなどの理由により, その分子構築が最もよく解明されている膜の1つである. 赤血球膜は, スペクトリン, アクチンおよびバンド4.1を主な成分とする特徴的な細胞骨格系によって裏打ちされており, このような裏打ち構造がATPや種々の薬物に依存した赤血球の形態変化および, 変形能の調節に重要な役割を担っていることは, 既に著者らが報告した通りである. 一方, SDS電気泳動法やフリーズフラクチャー法などの電子顕微鏡技術の発達に伴い, 赤血球膜におけるいわゆる膜内粒子は陰イオン輸送...

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Published in神奈川歯学 Vol. 20; no. 4; pp. 497 - 502
Main Authors 神部芳則, 大塚均, 中山隆, 東与光, 高橋常男, 池内孝芳, 高橋和人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.03.1986
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ISSN0454-8302

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Summary:「緒言」哺乳類の赤血球膜は, 赤血球が比較的入手しやすいことや, 細胞小器官を全く含まないため形質膜の精製が容易であることなどの理由により, その分子構築が最もよく解明されている膜の1つである. 赤血球膜は, スペクトリン, アクチンおよびバンド4.1を主な成分とする特徴的な細胞骨格系によって裏打ちされており, このような裏打ち構造がATPや種々の薬物に依存した赤血球の形態変化および, 変形能の調節に重要な役割を担っていることは, 既に著者らが報告した通りである. 一方, SDS電気泳動法やフリーズフラクチャー法などの電子顕微鏡技術の発達に伴い, 赤血球膜におけるいわゆる膜内粒子は陰イオン輸送体であるバンド3とPASタンパクに相当するものであり, その分布状態はかなり均一に分散していることが明らかになっている. しかしながら, 何らかの方法で裏打ち構造を除いたり, 裏打ちタンパクを凝集させると, 分布が乱れ部分的に凝集することから, 膜内粒子の分布状態に裏打ち構造が重要であることが示唆されている.
ISSN:0454-8302