食道アカラシアの治療 バルーン拡張術の有効性に関する検討 (第2報)

「抄録」食道アカラシアは食道運動障害を呈する疾患で, 良性疾患ではあるものの, QOLを大きく障害し, 食道癌の発生リスクともなるため, 適切な診断治療が重要である. 一般的に, 治療は内視鏡的治療や外科的治療が行われる. 以前, 我々は内視鏡的バルーン拡張術(pneumatic dilation: PD)を行った16例の食道アカラシアについて, PDの有効性に関する因子を検討し報告した. 近年, 新たな食道運動障害の診断基準(Chicago 分類)も策定されたことも踏まえ, アカラシア症例36例での検討を行ったため第2報として報告する. 対象は当院で食道アカラシアと診断し加療した36例で,...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 43; no. 1; pp. 17 - 28
Main Authors 中藤流以, 眞部紀明, 福嶋真弥, 勝又諒, 合田杏佑, 村尾高久, 石井学, 藤田穣, 松本啓志, 楠裕明, 塩谷昭子, 畠二郎, 春間賢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 01.06.2017
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ISSN0386-5924

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Summary:「抄録」食道アカラシアは食道運動障害を呈する疾患で, 良性疾患ではあるものの, QOLを大きく障害し, 食道癌の発生リスクともなるため, 適切な診断治療が重要である. 一般的に, 治療は内視鏡的治療や外科的治療が行われる. 以前, 我々は内視鏡的バルーン拡張術(pneumatic dilation: PD)を行った16例の食道アカラシアについて, PDの有効性に関する因子を検討し報告した. 近年, 新たな食道運動障害の診断基準(Chicago 分類)も策定されたことも踏まえ, アカラシア症例36例での検討を行ったため第2報として報告する. 対象は当院で食道アカラシアと診断し加療した36例で, うち27例(男性8例, 女性19例, 平均年齢51.0±16.5歳)にPDを行った. 対象をPD有効例と無効例とに群分けし, その2群間で患者背景, QOL, High-resolution manometry (HRM) 所見, 治療前後でのHRM所見の差異について検討を行った. 結果はPD有効例は19例(70.4%)であった. 有効群と無効群との比較を行うと, 無効群で女性が多い傾向にあった(p=0.06). HRM所見では有効例で Chicago 分類 type IIアカラシアが有意に多く認められた(p=0.04). また, 治療前後のHRM所見の差異については, 有効例で治療前後の下部食道括約筋(lower esophageal sphincter: LES)圧変化率が有意に大きかった. 以上より, Chicago 分類 type IIのアカラシアではPDの有効性が高く, また1度PDを行った症例でもLESP変化率が大きい症例では有効性が高いことが示された.
ISSN:0386-5924