ウイルス濃縮法を用いたミニプール核酸増幅検査(NAT)の高感度化

HIV・HCV・HBVの分画原料血漿のミニプール法(500本プール)による核酸増幅検査(NAT)では, この1年の間にHBVで数十例, HCVで数例のNAT陽性例が検出されたと報告されている. このことは, 現在の血清学的検査法で検出できないウインドウ期の献血が予想以上に多いことを示している. 今回我々は, 輸血用血液のスクリーニングを目的とし, HBV・HCV・HIVの3項目のNATの導入について, プールサイズとウイルスの濃縮法について検討したので報告する. 【方法】1検体あたりに用いる検体量は100μLとし, プールサイズは10~500までを想定したプールサイズに応じた量の陰性血漿を用い...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 282
Main Authors 伊原弘美, 佐藤進一郎, 加藤俊明, 池田久實, 関口定美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.1999
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ISSN0546-1448

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Summary:HIV・HCV・HBVの分画原料血漿のミニプール法(500本プール)による核酸増幅検査(NAT)では, この1年の間にHBVで数十例, HCVで数例のNAT陽性例が検出されたと報告されている. このことは, 現在の血清学的検査法で検出できないウインドウ期の献血が予想以上に多いことを示している. 今回我々は, 輸血用血液のスクリーニングを目的とし, HBV・HCV・HIVの3項目のNATの導入について, プールサイズとウイルスの濃縮法について検討したので報告する. 【方法】1検体あたりに用いる検体量は100μLとし, プールサイズは10~500までを想定したプールサイズに応じた量の陰性血漿を用いて, 濃度既知の陽性検体100μLをスパイク後, HBVは超遠心法, HCV・HIVはPEG沈殿法により濃縮を行い, ウイルス濃縮の有無による検出感度の違いを求めた. ウイルス核酸の検出は日赤標準法に準じたPCR法の他に, HCVについてはロシュ社製の自動抽出装置GT-12および自動増幅検出装置コバスアンプリコアを用いた. 【結果と考察】輸血用血液のスクリーニングにNATを導入するとすれば, その作業量・コストの面からミニプール法で行うのが適当と思われる. しかし, ミニプール法の場合, プールサイズはそのまま検体の希釈倍数となり, 個別検体のNATに比して100本プールでは100倍感度が落ちることになる. 実際にスパイク実験の結果からもプールによる低感度化は確認された. しかし, プール後に超遠心あるいはPEG沈殿によるウイルスの濃縮を行うことにより, 個別NATとほぼ同等の感度を得ることが可能であった. NATスクリーニングの導入に当たっては, いかに作業を簡略化(自動化)し, 検査時間を短縮するかがポイントになる. その場合, 日赤標準法のような用手法と同等の感度を得ることは難しく, さらにプールによる感度低下を防ぐ意味でも濃縮法は有用であると考えられた.
ISSN:0546-1448