手術困難な股・膝関節破壊例に対するリハビリテーション

人工関節全置換術は, 関節破壊による疼痛, 運動困難に対して多大な貢献をしてきたが, 高齢化によりさまざまな問題が生じてきた. 我々はこの1年間に14症例(平均年齢70歳)の手術不能な下肢関節破壊例または人工関節の再置換不能例を経験した. 内訳は, 慢性腎不全(RA3例, 透析2例)・肝硬変(2例)・心疾患(2例)等の内科疾患の合併が9例, パーキンソン等運動機能系3例, その他人工関節の再置換不能2例であった. 痴呆を重複合併する1例を除く13例において, 著しい疼痛にもかかわらず歩行意欲が旺盛であった. その背景には家族に迷惑をかけたくないという要素も介在すると考えられる. 我々は, 靴の...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 36; no. 12; pp. 906 - 907
Main Authors 石川聡, 松田久雄, 藤原誠, 石川麻子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1999
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ISSN0034-351X

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Summary:人工関節全置換術は, 関節破壊による疼痛, 運動困難に対して多大な貢献をしてきたが, 高齢化によりさまざまな問題が生じてきた. 我々はこの1年間に14症例(平均年齢70歳)の手術不能な下肢関節破壊例または人工関節の再置換不能例を経験した. 内訳は, 慢性腎不全(RA3例, 透析2例)・肝硬変(2例)・心疾患(2例)等の内科疾患の合併が9例, パーキンソン等運動機能系3例, その他人工関節の再置換不能2例であった. 痴呆を重複合併する1例を除く13例において, 著しい疼痛にもかかわらず歩行意欲が旺盛であった. その背景には家族に迷惑をかけたくないという要素も介在すると考えられる. 我々は, 靴の補高, 坐骨支持装置の作成, 腰掛け付き歩行器の処方等において歩行ヘアブローチしてきたが, 患者の十分な満足を得られていないのが現状である. その原因として症状の重症化が挙げられる. 肢体不自由の身体障害者手帳が4級は2例のみで他は1・2級に相当することからも, 単なる局所的な関節破壊ではなく下肢全体の廃用または著しい障害であり障害が重度であることが伺える. こうした患者は, 高齢化や透析患者の増加より今後増加傾向にあることが容易に推察される. また, たとえ手術可能でも高齢化により術後長期フォロー例において再置換に耐えられるか, という問題が生じてくる. こうした問題は今後の課題といえる.
ISSN:0034-351X