歯周病原性細菌が及ぼす血管内皮細胞への影響について

成人性歯周疾患が, 虚血性心疾患の重要なリスクファクターになりうることが示されている. しかしながら, これを支持する基礎的知見はいまだ少ない. そこで今回, われわれは, Porphyromonas gingivalisがもつ血管内皮細胞への病原性について検索を行ったところ, 以下の結果を得た. 1. P. gingivalisはヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に特異的に付着した. 2. P. gingivalisは, HUVECから誘導されたケモカインを菌体のもつプロテアーゼにより破壊した. 3. P. gingivalis線毛は, HUVECからのトリプシン産生を誘導した. これら...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in口腔衛生学会雑誌 Vol. 53; no. 2; p. 159
Main Authors 広瀬公治, 水谷博幸, 小林美智代, 千葉逸郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本口腔衛生学会 30.04.2003
Online AccessGet full text
ISSN0023-2831

Cover

More Information
Summary:成人性歯周疾患が, 虚血性心疾患の重要なリスクファクターになりうることが示されている. しかしながら, これを支持する基礎的知見はいまだ少ない. そこで今回, われわれは, Porphyromonas gingivalisがもつ血管内皮細胞への病原性について検索を行ったところ, 以下の結果を得た. 1. P. gingivalisはヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に特異的に付着した. 2. P. gingivalisは, HUVECから誘導されたケモカインを菌体のもつプロテアーゼにより破壊した. 3. P. gingivalis線毛は, HUVECからのトリプシン産生を誘導した. これらのことは, P. gingivalisが血管内皮局所において感染を成立させ, さらには, ケモカインを破壊することにより, 慢性持続感染を維持することができる可能性を示唆する. また, 内皮よりの異常血液凝固因子であるトリプシンの産生を線毛が誘導するという知見は, 血栓の形成に本菌の構成成分が関与する可能性を示すものとして興味がある.
ISSN:0023-2831