免疫機能と環境要因 環境と免疫(1)

私達はお天気の良い日には気分が良くなり, 曇りや雨の日は気分が落ち着く. 高気圧→交感神経優位, 低気圧→副交感神経優位, の反応が起こるからである, もう少し具体的に言うと, 高気圧の時は濃い酸素を吸って頻脈が来ているし, 低気圧の時は薄い酸素を吸って徐脈が来ている. 一方, 生体防御系も自律神経支配を受けているので上記した大気圧のゆさぶりは免疫レベルを変えることになる. 生体防御系の構成要素である白血球はマクロファージが基本である. その後, マクロファージは進化によって顆粒球とリンパ球を生み出している. ヒト末梢血では顆粒球とリンパ球の比率は約60%:35%であり残りがマクロファージ(単...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 1; p. 69
Main Author 安保徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 15.02.2003
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ISSN1345-4676

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Summary:私達はお天気の良い日には気分が良くなり, 曇りや雨の日は気分が落ち着く. 高気圧→交感神経優位, 低気圧→副交感神経優位, の反応が起こるからである, もう少し具体的に言うと, 高気圧の時は濃い酸素を吸って頻脈が来ているし, 低気圧の時は薄い酸素を吸って徐脈が来ている. 一方, 生体防御系も自律神経支配を受けているので上記した大気圧のゆさぶりは免疫レベルを変えることになる. 生体防御系の構成要素である白血球はマクロファージが基本である. その後, マクロファージは進化によって顆粒球とリンパ球を生み出している. ヒト末梢血では顆粒球とリンパ球の比率は約60%:35%であり残りがマクロファージ(単球)である. 顆粒球は貪食能によって細菌処理に当たり, リンパ球は免疫能によって微小抗原の処理に当たっている. そして, 顆粒球が交感神経支配を受けリンパ球が副交感神経支配を受けその分布や機能が自律神経系の調節下にあったのである. このため, 交感神経刺激で顆粒球が増加し, 副交感神経刺激でリンパ球が増加する. 働きづめの人は顆粒球の比率が上昇し, ゆったり生きたり, よく食べる人はリンパ球の比率が上昇する. 同じ人でも, 上記した大気圧の変化はこれら白血球の分布にさらに変化を与えているのである. このような「白血球の自律神経支配」は生体にとって合目的なもので, いかに効率よく生体防御を行うかという反応から出発している. しかし, 自律神経系が一方に長期に偏ると生体は破綻をきたす. 交感神経緊張→顆粒球増多→組織破壊の炎症(胃潰瘍, 潰瘍性大腸炎, 痔疾など), 副交感神経緊張→リンパ球増多→アレルギー炎症(アトピー性皮膚炎, 気管支喘息, 花粉症など), の図式である. この他多くの環境変化が自律神経を介して免疫系に影響している. 排気ガス(CO2)による慢性的副交感神経刺激, 土壌や水の汚染による急性の(くり返す)副交感神経刺激が挙げられる. 副交感神経はそもそもリラックスや消化管機能を支配する神経であるが, 急性に反射が起こると発熱, 発赤, 発疹, 痛み, 下痢などの不快な症状を引き起こす力を持っている. これらの反応を刺激物を外に出そうという「生体の治癒反射」と理解する必要もある. 現代医学はこれらの生体と環境のかかわりを無視して, 過度な対症療法を続け生体を破綻に追い込む傾向がある.
ISSN:1345-4676