心肺蘇生中の低血糖
最近, われわれは小児開心術後に心停止をきたした症例で, 心肺蘇生中に極度の低血糖を観察したので, 心肺蘇生中の低血糖の頻度, 発生機序, 臨床的意義などについて若干の検討と考察を加えて報告する. 症例は6歳男児でVSD+PSの術後に急性心不全で心停止をきたし, 一時心マッサージにより血圧は回復したが, その時の血糖値は14mg/dlであった. 過去7年間にI.C.U.で死亡した開心術後の43例で心肺蘇生時の血糖値を検索した. 血糖値を測定してあるものは4例にすぎず, この内の3例で40mg/dl以下の低血糖を呈していた. すべて小児症例であり, 小児開心術後の症例に限れば9.7%の頻度となる...
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| Published in | 蘇生 Vol. 5; pp. 88 - 89 |
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| Main Authors | , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本蘇生学会
01.04.1987
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| ISSN | 0288-4348 |
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| Summary: | 最近, われわれは小児開心術後に心停止をきたした症例で, 心肺蘇生中に極度の低血糖を観察したので, 心肺蘇生中の低血糖の頻度, 発生機序, 臨床的意義などについて若干の検討と考察を加えて報告する. 症例は6歳男児でVSD+PSの術後に急性心不全で心停止をきたし, 一時心マッサージにより血圧は回復したが, その時の血糖値は14mg/dlであった. 過去7年間にI.C.U.で死亡した開心術後の43例で心肺蘇生時の血糖値を検索した. 血糖値を測定してあるものは4例にすぎず, この内の3例で40mg/dl以下の低血糖を呈していた. すべて小児症例であり, 小児開心術後の症例に限れば9.7%の頻度となる. 当救命救急センターで扱ったDOA症例で心肺蘇生中に血糖値が測定してあった61例についてみると, その内の5例, 8.2%に40mg/dlの低血糖を観察した. 原疾患, 発症から受診までの時間などに低血糖をもたらす可能性のある共通の背景因子はなく, 他の検査データと血糖値との間にも相関はなかった. ストレス下の糖代謝異常は一般に高血糖, 耐糖能の低下として観察される. 心停止という極端な循環障害によって肝臓での糖産生の低下がもっとも考えられる可能性であるが, 心停止中の大半の症例では高血糖を呈していることから, これのみでは説明できない. 今日の蘇生学最前線の薬剤や治療的手技を駆使して心停止患者の蘇生に努めてみても, こうした極度の低血糖の状況下では, 主要臓器が蘇生するはずはない. しかも調べた範囲内では心肺蘇生中の低血糖の頻度は予想外に高かった. この心肺蘇生中の低血糖の発生機序の究明の必要性を痛感すると同時に, 心肺蘇生時の低血糖についての注意を喚起したい. |
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| ISSN: | 0288-4348 |