(9)当施設における選択的脳灌流法―distal first法を用いて

【背景】当施設において, 弓部大動脈人工血管置換術には逆行性脳灌流法(RCP)を施行していたが, 血管の性状・末梢側の吻合部位により選択的脳灌流法(SCP)採用することとなった. 今回は当施設において施行しているdistal first法を用いた選択的脳灌流法(SCP)を紹介する. 【方法】まず麻酔導入時, SCPに備え動脈圧ラインを左右橈骨動脈に確保しておく. SCP回路は当施設において通常使用している遠心ポンプシステムを用いた体外循環回路のリサーキュレーションラインより分岐させたチューブを分離ローラーポンプに掛け, SCP回路の送血圧を測定する. 胸骨切開法としては通常の正中切開を採用し,...

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Published in体外循環技術 Vol. 34; no. 4; p. 328
Main Authors 脇田亜由美, 後藤和大, 林啓介, 西山博司, 亀蔦弘, 細野文子, 志賀美子, 有村友宏, 上田裕一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 01.12.2007
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ISSN0912-2664

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Summary:【背景】当施設において, 弓部大動脈人工血管置換術には逆行性脳灌流法(RCP)を施行していたが, 血管の性状・末梢側の吻合部位により選択的脳灌流法(SCP)採用することとなった. 今回は当施設において施行しているdistal first法を用いた選択的脳灌流法(SCP)を紹介する. 【方法】まず麻酔導入時, SCPに備え動脈圧ラインを左右橈骨動脈に確保しておく. SCP回路は当施設において通常使用している遠心ポンプシステムを用いた体外循環回路のリサーキュレーションラインより分岐させたチューブを分離ローラーポンプに掛け, SCP回路の送血圧を測定する. 胸骨切開法としては通常の正中切開を採用し, 下行大動脈まで瘤が及んでいる場合には前側方開胸を加える. カニュレーションは通常, 上下大静脈の2本脱血・上行大動脈送血を行うが, 上行大動脈瘤に直接送血する場合もある. カニュレーションが完了した後に動脈拍動を確認しゆっくりとポンプオンをする. 完全体外循環へ移行し冷却, 咽頭温が25℃になった時点からpH stat法を併用する. 咽頭温21℃, 膀胱温24~25℃の時点で, 一瞬循環停止とする. 瘤壁を切除し弓部3分枝に富士システムズマリアブルカテーテル臓器灌流用を挿入する. カニューレサイズは各分枝の径により異なるが当施設においては通常腕頭動脈に14Fr, 左総頸・左鎖骨下動脈に12Frを用いている. カニューレが挿入されたら左総頸動脈の圧としてカニューレ先端圧を取る. 3分枝全ての圧の確認が取れるようになった時点でSCPを開始する. SCPの流量は1分枝あたり200~300ml/min(3分枝で10~15ml/min/kg)とし, 動脈圧を40~60mmHgに維持するよう送血流量を調節している. SCP確立後, 通常のdistal first法に準じて遠位弓部より吻合を始める. 末梢側の吻合が完了したら人工血管の中枢側と3分枝をクランプし, 人工血管側枝より遠心ポンプにて下行大動脈送血を開始する(目標値:送血量INDEX1.5, 動脈圧60mmHg, CVP±0cmH2O). 弓部3分枝の再建は一番深い左鎖骨下動脈から順に吻合を開始し, 吻合が終了した人工血管分枝より順に灌流を再開する. 全ての吻合が終了したら復温を開始し, 最後に中枢側の人工血管と大動脈基部を吻合し完了とする. 【終わりに】distal first法を用いた弓部人工血管置換術におけるSCPは, RCPに比べ時間制限が少ないため有用な方法である. しかしながら, 体外循環を行う技士にとっては, 回路構成や手技が複雑となる. どの様な症例であっても言えることだが, SCPを行う際はいつも以上に医師とのコミュニケーションが重要となる.
ISSN:0912-2664