冠状動脈入口部病変に対する外科的形成術5例の経験

冠状動脈入口部に限局した病変に対して, 直接入口部の開大を図る術式を5例に施行した. 右冠状動脈入口部孤立性病変の1例(66歳女)には右冠状動脈の移植術を, 他の4例(51歳女, 大動脈炎症候群;60歳女, 放射線障害;74歳女と76歳男, ともに動脈硬化性)に対しては大動脈から入口部に切り込み, 入口部をglutaraldehyde処理異種心膜(Xenomedica)でパッチ開大する, onlay patch angioplastyを適用した. 74歳女の1例には左右冠状動脈の形成を, 2例には左冠状動脈入口部の形成を, 放射線障害の1例には大動脈弁置換+左冠状動脈入口部形成を行った. 心外...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 6; pp. 465 - 472
Main Authors 渡辺直, 林和秀, 山西秀樹, 田中佐登司, 島本透子, 南勝晴, 阿部秀樹, 青木健郎, 野崎洋一, 河合裕子, 木住野晧, 太田茂樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 丸善 15.06.1996
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ISSN0586-4488

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Summary:冠状動脈入口部に限局した病変に対して, 直接入口部の開大を図る術式を5例に施行した. 右冠状動脈入口部孤立性病変の1例(66歳女)には右冠状動脈の移植術を, 他の4例(51歳女, 大動脈炎症候群;60歳女, 放射線障害;74歳女と76歳男, ともに動脈硬化性)に対しては大動脈から入口部に切り込み, 入口部をglutaraldehyde処理異種心膜(Xenomedica)でパッチ開大する, onlay patch angioplastyを適用した. 74歳女の1例には左右冠状動脈の形成を, 2例には左冠状動脈入口部の形成を, 放射線障害の1例には大動脈弁置換+左冠状動脈入口部形成を行った. 心外膜脂肪織に厚く覆われている冠状動脈基部の剥離露出には, 超音波組織破砕吸収装置(Sonotec)が有用であった. 大動脈遮断時間87.8±31.4分, 術中出血量は475±199mlであった. 周術期に有意の虚血性合併症を認めず, 2-38(10.6±15.4)ヵ月の経過観察において狭心症の再発などの心事故を認めない. 本術式は冠状動脈バイパス術に比較して順行性の十分な血流を再開できる利点があり, 特に大動脈炎症候群においては, 鎖骨下動脈への炎症波及, 閉塞や静脈グラフト使用の際の中枢側吻合部の炎症に伴うトラブルが回避できる点などで有利であり, 試みられるべき方法論と考えられた.
ISSN:0586-4488