巨大な顎下部唾液貯留嚢胞の摘出手術
舌下腺, 顎下腺の貯留嚢胞の成り立ちについてはいまだ色々な議論がある. 治療法は外科的摘出手術が適応し, 開窓術, 嚢胞摘出術あるいは嚢胞と共に唾液腺の摘出術が施行される. このうち開窓術は顎下部に発生した嚢胞に対しては解剖学的適応症に限界があり, また術後しばしば再発が起こりうる. したがって根治的治療としては全摘出術が必要となる. しかし本疾患の嚢胞壁は上皮膚を欠き, 薄い線維性組織から成ることが多く, 術中に嚢胞壁の破綻を生じ易いため全摘出は困難となることが多い. われわれは小児に発生した巨大な顎下部唾液貯留嚢胞の全摘出術に際し嚢胞腔内に印象用寒天を注入することにより容易に摘出することが...
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| Published in | 小児口腔外科 Vol. 2; no. 1; p. 91 |
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| Main Authors | , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本小児口腔外科学会
01.05.1992
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| ISSN | 0917-5261 |
Cover
| Summary: | 舌下腺, 顎下腺の貯留嚢胞の成り立ちについてはいまだ色々な議論がある. 治療法は外科的摘出手術が適応し, 開窓術, 嚢胞摘出術あるいは嚢胞と共に唾液腺の摘出術が施行される. このうち開窓術は顎下部に発生した嚢胞に対しては解剖学的適応症に限界があり, また術後しばしば再発が起こりうる. したがって根治的治療としては全摘出術が必要となる. しかし本疾患の嚢胞壁は上皮膚を欠き, 薄い線維性組織から成ることが多く, 術中に嚢胞壁の破綻を生じ易いため全摘出は困難となることが多い. われわれは小児に発生した巨大な顎下部唾液貯留嚢胞の全摘出術に際し嚢胞腔内に印象用寒天を注入することにより容易に摘出することができたので概要に若干の考察を加えて報告した. 症例は8歳の女児で, オトガイ部から左側顎下部に及ぶ巨大な顎下部唾液貯留嚢胞である. 嚢胞は極めて柔軟で波動性があり, そのままでの全摘出は困難であることが予想された. そこで全身麻酔導入後, 16ゲージ注射針にて内溶液を吸引し, 次にあらかじめ加熱溶解させた印象用寒天にイソジン液を混和し14ゲージの鎖骨下静脈穿刺用のカニューレ外套を用い嚢胞内に注入した. 寒天の硬化するのを待ち顎下部に皮切を加え嚢胞および顎下腺を一塊として容易に摘出することができた. 摘出標本の体積は約100cm^3 であった. 病理組織像では嚢胞壁は上皮を欠き薄い線維性結合組織のみから成っていた. 術後は良好に経過している. |
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| ISSN: | 0917-5261 |