臍帯血をもちいたヒトBリンパ球造血前駆細胞培養系の開発
細胞療法(Cell Therapy)としての臍帯血移植の治療成績向上のためには, 臍帯血バンクに代表されるインフラストラクチャーの整備と臍帯血幹細胞の特徴を解析する基礎研究の両者が必要である. 【目的】臍帯血幹細胞による免疫系の再構築能を解析するためには, ヒトリンパ球系幹細胞の in vitro 培養系の開発が急務である. 我々は臍帯血におけるBリンパ球造血前駆細胞の増殖と分化を支持する培養系を開発し, 臍帯血からのBリンパ球発生過程における関連抗原の発現動態を解析したので報告する. 【方法】ソーティングして得た臍帯血CD34^+ 10^- 細胞をマウス間質細胞株MS5上でSCF, G-CS...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 2; p. 207 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
01.04.1998
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ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 細胞療法(Cell Therapy)としての臍帯血移植の治療成績向上のためには, 臍帯血バンクに代表されるインフラストラクチャーの整備と臍帯血幹細胞の特徴を解析する基礎研究の両者が必要である. 【目的】臍帯血幹細胞による免疫系の再構築能を解析するためには, ヒトリンパ球系幹細胞の in vitro 培養系の開発が急務である. 我々は臍帯血におけるBリンパ球造血前駆細胞の増殖と分化を支持する培養系を開発し, 臍帯血からのBリンパ球発生過程における関連抗原の発現動態を解析したので報告する. 【方法】ソーティングして得た臍帯血CD34^+ 10^- 細胞をマウス間質細胞株MS5上でSCF, G-CSFと共培養した. 培養開始後2週ごとにMS-5に接着して増殖する細胞を回収し, 細胞表面抗原をFACSで, 遺伝子発現をRT-PCRで解析した. 【結果】臍帯血CD34^+ CD10^- 細胞(1.0x10^3 個)を培養すると, 培養開始2週目にはCD10^+ CD19^+ Cμ^- のBリンパ球前駆細胞(progenitor B cell)が出現し, 4週目には54.0x10^3 個に達した. SCFとG-CSFの存在下では270.0x10^3 個(4週目)にまで増幅された. 6週目(SCFとG-CSF存在下)にはCμ鎖^+ およびSμ鎖^+ 細胞への分化が観察された. FACSおよびRT-PCRにて progenitor B cell におけるG-CSFRの発現を確認した. また, CD10の発現がCD19に先行すること, precursor B cell (CD10^+ 19^+ Cμ^+ )の産生前にRAG-1, RAG-2, PAX-5遺伝子の発現がみられた. 【考察】本培養系は造血幹細胞から成熟Bリンパ球までの発生過程を in vitro で再現していると考えられ, 臍帯血中のリンパ球系幹細胞の動態を解析するうえで有用であると考えられた. また, Bリンパ球の増殖分化過程におけるG-CSFの関与が示唆された. |
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ISSN: | 0546-1448 |