脳血管障害患者の退院時のFIMと退院後の転帰先について

リハビリテーション(以下, リハ)病院で入院加療後の転帰先の予測は重要なテーマである. 機能的自立度評価法(FIM)を用いて, 退院時のFIMの点数と退院後の転帰先の関係について, 興味深い結果が得られたため報告する. 対象は1991年10月1日~1994年9月31日の3年間に当院リハ科に入院した初回発作の脳血管障害患者102例である. 退院後の転帰先を自宅復帰した場合(自宅復帰群)と施設入所もしくは病院転院となった場合(施設/病院群)の2群に分け, 退院時のFIM運動項目, 認知項目の合計点数の分布を比較した. また, 退院時のADL構造をRasch分析を用いて調べた. 全症例102名のうち...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inリハビリテーション医学 Vol. 33; no. 12; pp. 999 - 1000
Main Authors 辻哲也, 花山耕三, 都丸哲也, 園田茂, 千野直一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.12.1996
Online AccessGet full text
ISSN0034-351X

Cover

More Information
Summary:リハビリテーション(以下, リハ)病院で入院加療後の転帰先の予測は重要なテーマである. 機能的自立度評価法(FIM)を用いて, 退院時のFIMの点数と退院後の転帰先の関係について, 興味深い結果が得られたため報告する. 対象は1991年10月1日~1994年9月31日の3年間に当院リハ科に入院した初回発作の脳血管障害患者102例である. 退院後の転帰先を自宅復帰した場合(自宅復帰群)と施設入所もしくは病院転院となった場合(施設/病院群)の2群に分け, 退院時のFIM運動項目, 認知項目の合計点数の分布を比較した. また, 退院時のADL構造をRasch分析を用いて調べた. 全症例102名のうち, 自宅復帰は75名(74%), 施設/病院群は27名(26%), 平均年齢は自宅復帰群62.6歳, 施設/病院群66.4歳で有意差はみられなかった. FIM運動項目合計点の平均点数は自宅復帰群72.6点, 施設/病院群では37.8点で, 有意に自宅復帰群で高かった. 自宅復帰群の2SDは63~83点の範囲であり, 自宅復帰群と施設/病院群の境界は60点台前半と考えられた. 60点台前半のADL構造は, いわゆる半介助群(移乗, トイレ動作に介助が必要だが, 食事, 排泄管理は自立)とセルフケア自立群(風呂関連項目, 階段は介助だが他は自立)の中間に位置し, 転帰先決定のうえで鍵となる点数であることが示唆された. 一方, FIM認知項目合計点の平均点数は, 自宅復帰群31.8点, 施設/病院群では18.4点で, 有意に自宅復帰群で高かった. 自宅復帰群の2SDは22~35点の範囲であり, 自宅復帰群と施設/病院群の境界は合計点数20点台前半と考えられ, 基本的なコミュニケーション, 問題解決は可能, 社会的交流, 記憶にはごく軽度の配慮を要する程度以上であれば自宅復帰となる可能性が高いと考えられた.
ISSN:0034-351X