純粋失読例におけるletter-by-letter readingの経過

仮名逐字読みを伴う3症例を対象に, 漢字・仮名単語の音読, 文章の音読について, その速度と錯読の性質について経時的に観察した. 症例は左後頭葉を中心に脳梁膨大部, 側頭葉に損傷を認める3例であった. 音読は漢字・仮名ともに時間がかかり, Schreibendes Lesenがみられた. 仮名は高頻度語が1文字・低頻度語よりも速く音読され, 遂字読みの音読の後に理解された. また仮名では字性錯読がみられた. 漢字は音読できなくてもある程度理解され, 意味性錯読がみられた. 色彩認知障害, 構成, 視覚記銘, 言語記銘, 呼称, 漢字書字にも障害がみられた. これらの症例に対し, 50単語につい...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 28; no. 12; pp. 1104 - 1105
Main Authors 種村純, 新貝尚子, 重野幸次, 岸久博, 長谷川恒雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1991
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ISSN0034-351X

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Summary:仮名逐字読みを伴う3症例を対象に, 漢字・仮名単語の音読, 文章の音読について, その速度と錯読の性質について経時的に観察した. 症例は左後頭葉を中心に脳梁膨大部, 側頭葉に損傷を認める3例であった. 音読は漢字・仮名ともに時間がかかり, Schreibendes Lesenがみられた. 仮名は高頻度語が1文字・低頻度語よりも速く音読され, 遂字読みの音読の後に理解された. また仮名では字性錯読がみられた. 漢字は音読できなくてもある程度理解され, 意味性錯読がみられた. 色彩認知障害, 構成, 視覚記銘, 言語記銘, 呼称, 漢字書字にも障害がみられた. これらの症例に対し, 50単語について漢字・仮名の条件で, また北風と太陽の文章を通常の漢字仮名混じりと仮名のみの条件で音読検査を2回行った. 漢字・仮名単語の音読は正答率, 音読速度ともほぼ同様で, ともに改善を示した. 漢字の意味性錯読, 仮名の字性錯読も経過とともに減少した. 文章の音読では, 仮名の多音節語, 仮名が長く続く句の音読が困難であった. 仮名のみの文章では文節, 単語の抽出が困難であった. 仮名も漢字も音読に際して視覚処理―文字分析―単語同定―意味の経路と文字・音韻化の経路が同時並行的に働くと考えられるが, 漢字は比較的容易に視覚・意味処理がなされるのに対し, 仮名ではそれが困難であった. 逆に音韻化は仮名の方が容易で, その結果, 仮名逐字読みと漢字の意味性錯読が同時に出現したと考えられた. <質疑応答> 北川(防衛医大):letter-by-letter readingの際に音読と訓読で差異が認められたかどうか教えてください. 種村純:(1)音読みと訓読みで差があったか:特に観察されなかった. (2)音読時間の短縮には何が関与しているか:文字・音韻変換機構を中心に, 全般的に改善が生じていると考えている. (3)漢字・仮名の処理部位は同定されているか:視覚・意味経路と音韻経路の処理成績に差を示す症例がいて, 前者の障害はよりWernicke失語に多く, 後者はBroca失語に多い傾向にある.
ISSN:0034-351X