経皮的心肺補助(PCPS)にて救命しえた急性心筋障害の2例
急速に進行する心原性ショックに対し, 早期から経皮的心肺補助(PCPS)を導入し, 救命しえた2例を経験したので報告する. 〔症例1〕42歳, 男性. 既往歴;なし. 平成5年7月13日, 数日来の感冒様症状と呼吸困難を訴えて, 近医を受診した. 胸部X線写真で心拡大を認め, 起座呼吸が出現してきたため同日当院救急部に搬送されてきた. 心エコー所見はdiffuse hypokinesisで心原性ショックの進行が急激であるため, ICUでPCPSが装着された. 気管内挿管後人工呼吸を開始した. 第4病日より心機能・呼吸機能の改善が認められ, 第8病日にPCPSから離脱し, 第11病日にICUを退...
Saved in:
Published in | 蘇生 Vol. 18; no. 3; p. 239 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本蘇生学会
01.09.1999
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0288-4348 |
Cover
Summary: | 急速に進行する心原性ショックに対し, 早期から経皮的心肺補助(PCPS)を導入し, 救命しえた2例を経験したので報告する. 〔症例1〕42歳, 男性. 既往歴;なし. 平成5年7月13日, 数日来の感冒様症状と呼吸困難を訴えて, 近医を受診した. 胸部X線写真で心拡大を認め, 起座呼吸が出現してきたため同日当院救急部に搬送されてきた. 心エコー所見はdiffuse hypokinesisで心原性ショックの進行が急激であるため, ICUでPCPSが装着された. 気管内挿管後人工呼吸を開始した. 第4病日より心機能・呼吸機能の改善が認められ, 第8病日にPCPSから離脱し, 第11病日にICUを退室した. ペア血清抗体価によりパラインフルエンザによるウイルス性心筋炎と診断された. 〔症例2〕65歳, 男性. 平成9年5月に甲状腺機能亢進症と診断されて抗甲状腺薬を処方されたが, 約2週間の内服後に自己判断で中止した. 平成10年8月1日, 嘔気・嘔吐, 全身倦怠感, 食欲不振が出現した. 市販の漢方薬では改善せず, 10日当院内科に甲状腺機能亢進症の診断で入院した. 11日呼吸困難, 意識障害(JCS30), 血圧下降をきたした. 血液検査上筋原性酵素の上昇を認めたが, 心電図上ST変化はなかった. 冠動脈造影所見は異常なかったが, 心エコー及び左室造影所見はdiffuse severe hypokinesisを呈していた. 心不全の進行が急激であることからPCPSが装着され, ICU入室となった. 入室2日間は心エコー上壁運動をほとんど認めなかったが, 3日目よりわずかに壁運動を認めるようになり, 7日目にPCPSから離脱した. 16日目にICUを退室した. 急性期ならびに回復期の心筋生検では炎症所見を認めず細胞の膨化を認めるのみであった. ぺア血清抗体価でウイルスの関与は否定的であった. 病歴, 臨床症状, 治療経過より甲状腺機能亢進症による心筋障害と診断した. 〔結語〕ウィルス性心筋炎と甲状腺機能亢進による2例の急性心筋障害に対し, 早期からPCPSを導入し救命しえた. PCPS導入・離脱に, 心エコー所見は重要である. |
---|---|
ISSN: | 0288-4348 |