遺伝性非ポリポーシス大腸癌の遺伝子診断‐最近経験した3家系3症例から

症例1:50歳女性, 子宮内膜癌に罹患. 家族歴:母が異時性の大腸癌と子宮内膜癌に罹患. 兄46歳で大腸癌に罹患. 切除癌組織におけるMSIは陽性であったが遺伝子診断はhMLH1, hMSH2共に変異を認めなかった. 従って症例1ではhMLH1, hMSH2以外の遺伝子異常が考えられる. 症例2は42歳女性. 右卵巣癌, 子宮内膜癌の重複癌である. 遺伝子解析の結果hMLH1のExon2, Codon67にGGG(Gly)→AGG(Arg)のミスセンス変異を認めた. データベース上, 同様の変異が5例報告されており病的変異として登録されている. 症例3は51歳男性. 父と弟が大腸癌で, 本患者...

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Published in家族性腫瘍 Vol. 4; no. 2; p. A28
Main Authors 佐久間威之, 野水整, 岩倉敬, 山田睦夫, 片方直人, 渡辺文明, 山口佳子, 菅野康吉, 竹之下誠一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 家族性腫瘍研究会 15.05.2004
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ISSN1346-1052

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Summary:症例1:50歳女性, 子宮内膜癌に罹患. 家族歴:母が異時性の大腸癌と子宮内膜癌に罹患. 兄46歳で大腸癌に罹患. 切除癌組織におけるMSIは陽性であったが遺伝子診断はhMLH1, hMSH2共に変異を認めなかった. 従って症例1ではhMLH1, hMSH2以外の遺伝子異常が考えられる. 症例2は42歳女性. 右卵巣癌, 子宮内膜癌の重複癌である. 遺伝子解析の結果hMLH1のExon2, Codon67にGGG(Gly)→AGG(Arg)のミスセンス変異を認めた. データベース上, 同様の変異が5例報告されており病的変異として登録されている. 症例3は51歳男性. 父と弟が大腸癌で, 本患者も35歳時に上行結腸癌に罹患. 平成15年残存結腸に同時多発癌(D3個, S1個)を認め残存結腸全摘術を施行した. 原因遺伝子はhMLH1でExon14, Codon551にAAC(Asn)→ACC(Thr)のミスセンス変異を認め, MSI陽性であった. このケースも過去に同様の変異例が1例報告されており病的変異と考えられる. 【考察】HNPCCの遺伝子診断は癌の遺伝カウンセリングと表裏一体を成すものであって, 我々はこの疾の十分な知識と遺伝医療の知識が要求されると思われる. また現在補助的診断材料として行われている免疫組織化学的分析が今後更に進歩することによって, 臨床の場で早期に遺伝子診断が行えるよう期待したい.
ISSN:1346-1052