高齢者の頸椎・頸髄損傷の問題点

高齢者の頸椎・頸髄損傷の急性期と退院後の問題点について検討した. 対象症例は過去8年間の受傷時年齢が60歳以上の57例で, 平均年齢は69.3歳であった. 受傷原因は, 単なる転倒あるいは自転車走行中の転倒など, 些細な原因が多かった. 損傷の様態は, 骨損傷を認めるものは27例で, 椎間関節嵌頓が16例と最多であった. 骨損傷のない麻痺30例中, 6例にOPLL, 12例に高度の変性を認め二次的な椎管狭窄の状態であった. 治療は保存的治療41例, 手術療法16例であった. 急性期治療中の重篤な合併症は25例あり, 老人性痴呆と肺炎の頻度が高かった. 自宅復帰した重度麻痺患者のアンケート調査で...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 27; no. 7; p. 560
Main Authors 島田公雄, 小浦宏, 鶴上浩, 田中裕三, 甲康成, 相谷哲朗, 渡部邦久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 01.12.1990
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ISSN0034-351X

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Summary:高齢者の頸椎・頸髄損傷の急性期と退院後の問題点について検討した. 対象症例は過去8年間の受傷時年齢が60歳以上の57例で, 平均年齢は69.3歳であった. 受傷原因は, 単なる転倒あるいは自転車走行中の転倒など, 些細な原因が多かった. 損傷の様態は, 骨損傷を認めるものは27例で, 椎間関節嵌頓が16例と最多であった. 骨損傷のない麻痺30例中, 6例にOPLL, 12例に高度の変性を認め二次的な椎管狭窄の状態であった. 治療は保存的治療41例, 手術療法16例であった. 急性期治療中の重篤な合併症は25例あり, 老人性痴呆と肺炎の頻度が高かった. 自宅復帰した重度麻痺患者のアンケート調査では, 介護者は高齢の妻が多く, 在宅ケアを全員希望しているが実際受けている者は4名だけであった. 特別養護老人ホームの入所を希望しても近い将来実現する見込みはなかった. 頸損では一定期間頸部の安静固定を必要とするが, 一方, 高齢者においては合併症を防ぐためにできるだけ早く離床させるという, 相反する事柄を両立させる必要があるという点が問題である. 全身状態がよければ手術とかヘローベストなどに耐えられるが, そのような患者ばかりではない. また, 高齢者では易脊損性が高く, 運動能力が低下しているため, 転倒など些細な原因で受傷している. したがって, その予防に努力する必要があると思われた. 質問 柴崎啓一(座長):(1)受傷直後の種々の心因反応が強く出る傾向もあるとの印象を持っておりますが, 先生のご経験ではいかがでしょうか. (2)転倒・転落による受傷に関連して, 受傷前の神経症状についての情報が得られた症例はありましたでしょうか.
ISSN:0034-351X