顎口腔領域悪性腫瘍の遠隔転移について

顎口腔領域原発の悪性腫瘍は, そのほとんどが扁平上皮癌であり, 臨床的に遠隔転移を経験する頻度は少ないが, 遠隔転移する頭頚部癌は, 予後が悪く, その早期発見の臨床的意義は大きい. 一方, 悪性腫瘍の転移の中で顎口腔領域への遠隔転移は極めて稀であると言われており, その診断も必ずしも容易ではない. 今回われわれは, 顎口腔領域原発の悪性腫瘍の遠隔転移例, 他部位から顎口腔領域への遠隔転移例について調査し, その診断学的意義について検討したので報告する. 対象と方法 昭和57年4月から平成10年12月まで岡山大学歯学部歯科放射線科にて画像検査を受けた患者中, 悪性腫瘍と診断された737例を対象...

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Published in歯科放射線 Vol. 39; no. 3; pp. 176 - 177
Main Authors 相賀秀樹, 若狭亨, 河井紀子, 松崎秀信, 岸幹二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯科放射線学会 30.09.1999
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ISSN0389-9705

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Summary:顎口腔領域原発の悪性腫瘍は, そのほとんどが扁平上皮癌であり, 臨床的に遠隔転移を経験する頻度は少ないが, 遠隔転移する頭頚部癌は, 予後が悪く, その早期発見の臨床的意義は大きい. 一方, 悪性腫瘍の転移の中で顎口腔領域への遠隔転移は極めて稀であると言われており, その診断も必ずしも容易ではない. 今回われわれは, 顎口腔領域原発の悪性腫瘍の遠隔転移例, 他部位から顎口腔領域への遠隔転移例について調査し, その診断学的意義について検討したので報告する. 対象と方法 昭和57年4月から平成10年12月まで岡山大学歯学部歯科放射線科にて画像検査を受けた患者中, 悪性腫瘍と診断された737例を対象とした. 遠隔転移の疑わしい症例に対し, 核医学検査, CT, MRI等の検査がなされた. 結果 顎口腔領域原発腫瘍は729例であり, その内訳は, 扁平上皮癌669例, 腺様嚢胞癌15例, 粘表皮癌14例, 悪性リンパ腫19例, 悪性黒色腫5例, その他7例であった. 顎口腔領域より他部位へ遠隔転移を示した症例は, 18例であり, 肺への転移16例(扁平上皮癌12例, 悪性リンパ腫1例, 腺様嚢胞癌2例, 悪性線維性組織球腫1例), 骨転移5例(扁平上皮癌4例, 腺様嚢胞癌1例)であった. 骨転移症例は, 5例中3例で肺においても転移があった. 遠隔他部位より顎口腔領域への遠隔転移を示した症例は8例であり肺からの転移5例(腺癌4例, 大細胞癌1例), 肝からの転移1例(肝細胞癌), 胃からの転移1例(腺癌), 膝部軟組織からの転移1例(悪性線維性組織球腫)であった. 顎口腔領域原発の悪性腫瘍の遠隔転移は, 肺に最も多くみられ, 骨(特に椎骨), 肝, 腎がこれに次ぐと言われている. 今回の症例においても肺への転移が多かったが, 遠隔転移のスクリーニングにシンチグラムが有用であった. また, 遠隔転移が見られたのは, 腫瘍再発時が多く, 腫瘍再発時において転移を起こしやすいことが示唆された. 悪性腫瘍の顎口腔領域への遠隔転移は極めて稀であると言われているが, 原発巣は, 乳房が最も多く, 肺, 腎, 甲状腺, 前立腺, 胃, 腸管, 子宮の順と言われている. 今回の症例では, 肺からの転移例が多かった. 顎口腔領域の転移性腫瘍の判定には, X線検査, 臨床所見, 病歴や, 生検が有用であり, 特に存在診断には, 核医学検査が有用であった.
ISSN:0389-9705