下腿における矢状切断法の経験
血行障害に起因する下腿切断において, 慣習的な前後皮弁法では前方皮弁が薄く, 術後その部の血行障害をきたしやすく, 必ずしも優れた方法とはいいがたい. この点, 後方長皮弁法は優れるが, 断端末の過剰な軟部組織のために義足実用が遅れやすい欠点がある. われわれは, 血行障害を有する患者の下腿切断において, 矢状切断法(内外側皮弁法)を行って, その有用性を検討した. 手術法は, 内外側皮弁を作るように皮切し, 皮膚を筋膜から剥離せずに, まず前方部分を処理する. 前脛骨筋を一気に切ると, その下に前脛骨動静脈と深腓骨神経が露呈する. 脛骨, 腓骨および骨間膜を切断し, 末梢側の後面に付く軟部組...
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          | Published in | リハビリテーション医学 Vol. 29; no. 12; p. 1075 | 
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| Main Authors | , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本リハビリテーション医学会
    
        01.12.1992
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| ISSN | 0034-351X | 
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| Summary: | 血行障害に起因する下腿切断において, 慣習的な前後皮弁法では前方皮弁が薄く, 術後その部の血行障害をきたしやすく, 必ずしも優れた方法とはいいがたい. この点, 後方長皮弁法は優れるが, 断端末の過剰な軟部組織のために義足実用が遅れやすい欠点がある. われわれは, 血行障害を有する患者の下腿切断において, 矢状切断法(内外側皮弁法)を行って, その有用性を検討した. 手術法は, 内外側皮弁を作るように皮切し, 皮膚を筋膜から剥離せずに, まず前方部分を処理する. 前脛骨筋を一気に切ると, その下に前脛骨動静脈と深腓骨神経が露呈する. 脛骨, 腓骨および骨間膜を切断し, 末梢側の後面に付く軟部組織を剥離してもち上げれば, 前方からでも後方部分が十分広く展開され, 直下に後脛骨動静脈, 脛骨神経, 腓骨動静脈が確認できる. ヒラメ筋は, 可及的に切除する. ヒラメ筋の切除により, 断端の形態がよく整うだけでなく, 中に含まれる静脈叢がなくなることによって術後の浮腫が軽減する. 腓腹筋は縦切して内側頭と外側頭に分ける. 筋形成を行い, 皮膚は太めのナイロン糸で密にならぬよう縫合した後, ギプス固定を施す. われわれが経験した4例では, 創は全例一次治癒し, 断端末を縦に走る手術瘢痕は, 問題とはならなかった. 矢状切断法は, むしろ手技的にやさしく, 他の切断法と比べて有利な点が多く, 血行障害の下肢切断法として有用と考えた. | 
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| ISSN: | 0034-351X |