末梢血幹細胞の分離, 保存

われわれは, 末梢血幹細胞の採取, 保存に関して, ヘモネティクスV-50のリンパ球サージ法(ネブラスカ変法)を用いた. 末梢血幹細胞採取時期は, 化学療法後の骨髄回復期に, 白血球2,000/mm3, 血小板10×10 4/mm3を目安に採取する. 通常のリンパ球採取のプロトコールあるいはハイ, イールド法により8サイクル処理し, リンパ球層を採取する. 通常のリンパ球採取では, 多量の赤血球が混入している(Ht:18-27%). 通常は, Ficoll-PaqueやPercoll2層比重遠心法を用いて単核球層を分離し保存する. 欠点として, 分離に時間がかかる, 閉鎖系でないので細菌汚染の...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 37; no. 5; pp. 752 - 753
Main Authors 嶋勇吉, 橋本真一郎, 鈴木淑子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.11.1991
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ISSN0546-1448

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Summary:われわれは, 末梢血幹細胞の採取, 保存に関して, ヘモネティクスV-50のリンパ球サージ法(ネブラスカ変法)を用いた. 末梢血幹細胞採取時期は, 化学療法後の骨髄回復期に, 白血球2,000/mm3, 血小板10×10 4/mm3を目安に採取する. 通常のリンパ球採取のプロトコールあるいはハイ, イールド法により8サイクル処理し, リンパ球層を採取する. 通常のリンパ球採取では, 多量の赤血球が混入している(Ht:18-27%). 通常は, Ficoll-PaqueやPercoll2層比重遠心法を用いて単核球層を分離し保存する. 欠点として, 分離に時間がかかる, 閉鎖系でないので細菌汚染の危険性が増す, 回収率が悪い等があげられる. リンパ球サージ法では, サージにより採取した血液をリンパ球層と赤血球層を分離させることで赤血球の混入を減らし, リンパ球層を効率よく採取することが可能である. しかし, プロトコールである現在のリンパ球オートサージでは良好な分離は得られず, 採取の開始, 終了時は手動で行っている. 実際の手技を次に述べる. 通常のリンパ球採取のプロトコールで8サイクル処理し, この採取した末梢血幹細胞を含む血液を再びボウル内に移行させ, 不足分は患者血より採血する. buffy coatが形成されて光電管がこれを感知するとサージが開始されるが, butty coat層の部分が流出する前より採取の開始を手動で行い, 採取量100g~150gを目安に採取バッグ内のヘマトクリットが3%前後となったと判断される時点で手動で採取を終了する. 保存は, freezing solution(HES(分子量20δ)12%, DMSO10%, ヒト血清アルブミン8%)を採取バッグにあらかじめ用意しておき, チューブ接続器SCD312を用い採取バッグに接続し, 4℃下でfreezing solutionを採取バッグ内に混和しながら等量移行させ, -80℃deep freezer内に収納して終了する. 採取した血液量が多い場合は, 遠心により余分な血漿を除去してから同様の操作を行う. この保存法の場合, 最終のDMSOの濃度を5%にすることができ, 通常行われている10%に比べ, 保存時および融解後のDMSOによる細胞活性の低下を少くできる. 次にリンパ球サージ法によるデータを示す, 1990年6月より1991年1月まで23回施行している. 白血球数;14,200~66,600/mm3(平均3.87×10 4/mm3), 白血球分画は, リンパ球が99%であった. 白血球回収率:53.6~100%(平均80.6%)ヘマトクリット1.2~7.1%(平均3.63%), 総白面球数:1.9~11×10 9コ(平均5, 5.5×10 9コ), 血小板:177~780×10 4/mm3(平均378×10 4/mm3), 血小板数は多いが, 保存時, 融解時に凝集は認められず, 融解時には血小板は破壊される. また輸血時に異常を認めなかった. 次に, リンパ球サージ法で回収した末梢血幹細胞のCFU-GMのデータを示す. 症例は3例で, 化学療法後の骨髄回復期に2回採取し, 計4回採取した. totalのCFU-GMが, 4.0×10 5/kg, 1.0×10 5/kg, 1.9×10 5/kgであった(融解後のデータ). 症例2, 3はCFU-GMが少なかったが, これは再発してから末梢血幹細胞採取までの化学療法の期間が長かったためと考えられる. こういう場合, 末梢血幹細胞採取は難かしくなる傾向にある. 一般的には, 寛解を得た後早期に末梢血幹細胞を採取する. 3例とも末梢血幹細胞移植を施行し, 移植は成功している. 次に, 融解後のCFU-GMについて述べる. -80℃deep freezerで凍結保存した場合のCFU-GMの回収率は, それぞれ71.9±8.6%, 87.8±43.5%, 44±3.4%であった. 症例1, 2は比較的良好な回収率が得られている. 症例3の回収率低下は不明である. 今後, 検討の余地があると思われた. V-50によるリンパ球サージ法は比較的短時間に良好な回収率が得られ, 末梢血幹細胞の分離, 保存に適していると考えられた. 今後, 症例を重ねて検討してゆきたい.
ISSN:0546-1448