「深い褥瘡」の保存的治療の経験
褥瘡はその深さによりグレードI~IVに分類されることが多いが, 特にIII度とIV度の明確な区別はできにくく, むしろ「深い褥瘡」と「浅い褥瘡」という表現を用いる方が臨床上有用ではないかと思われる. 浅い褥瘡の場合, ほとんどの場合は保存的に治癒するが, 深い褥瘡は保存的に行うと治癒に多くの時間を要するため手術的な治療が主体である. しかし, 全身状態の悪化や高度の痴呆, 手術の拒否などのような場合には, 保存的に治療を余技なくされる場合も少数ながら存在する. 症例は1994年1月~2000年1月に経験した4例で, 年齢は38~83歳, 平均65.8歳. 基礎疾患は脳出血による片麻痺1例, 頸...
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Published in | リハビリテーション医学 Vol. 37; no. 12; p. 1152 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本リハビリテーション医学会
18.12.2000
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0034-351X |
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Summary: | 褥瘡はその深さによりグレードI~IVに分類されることが多いが, 特にIII度とIV度の明確な区別はできにくく, むしろ「深い褥瘡」と「浅い褥瘡」という表現を用いる方が臨床上有用ではないかと思われる. 浅い褥瘡の場合, ほとんどの場合は保存的に治癒するが, 深い褥瘡は保存的に行うと治癒に多くの時間を要するため手術的な治療が主体である. しかし, 全身状態の悪化や高度の痴呆, 手術の拒否などのような場合には, 保存的に治療を余技なくされる場合も少数ながら存在する. 症例は1994年1月~2000年1月に経験した4例で, 年齢は38~83歳, 平均65.8歳. 基礎疾患は脳出血による片麻痺1例, 頸椎損傷による四肢麻痺1例, 整形外科の術後2例である. 褥瘡の場所は全例が仙骨部であり, 原因としては, 全例, 前医での予防体制の不備と推測された. 方法の概要としては, 黒色期では黒色上皮は早期に除去. 黄色期においては壊死組織の可及的デブリードマンと徹底したポケット開放. 赤色期においては肉芽の形成促進より感染のコントロール. 全体として治癒がプラトー傾向になった時に現処置を漫然と繰り返さず, 処置方法を変えていく方針が必要だった. 全例が治癒にいたり, 経過期間は5ヵ月~5年, 平均22.3ヵ月. 治癒時のADLとしては, 全介助が3例, 自立が1例であった. |
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ISSN: | 0034-351X |