抗HLA抗体が関与している可能性がつよい新生児血小板減少症の1例
私達は抗HLA抗体が関与している可能性のつよい同種免疫性新生児血小板減少症(NAITP)を1例経験した. 症例:妊娠経過に異常なく, 妊娠中毒症などの合併症のない26歳の初妊初産婦から妊娠39週, 正常分娩で出生した男児で, 生下時体重3264g(AGA), Apgar score10点. 母は輸血歴なく, 赤血球不規則性抗体陰性, 血小板数正常で, 妊娠中, 分娩中に薬剤投与を受けていない. 児は生下時顔面, 胸部に小出血斑を多数認め, やや増強したが4生日には消極した. 臍帯血の血小板数は75,000/μl, 10生日で血小板数32,000/μlと最低値を示したが, 何ら治療を要せず正常値...
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          | Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 35; no. 2; p. 269 | 
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| Main Authors | , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本輸血学会
    
        01.05.1989
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| ISSN | 0546-1448 | 
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| Summary: | 私達は抗HLA抗体が関与している可能性のつよい同種免疫性新生児血小板減少症(NAITP)を1例経験した. 症例:妊娠経過に異常なく, 妊娠中毒症などの合併症のない26歳の初妊初産婦から妊娠39週, 正常分娩で出生した男児で, 生下時体重3264g(AGA), Apgar score10点. 母は輸血歴なく, 赤血球不規則性抗体陰性, 血小板数正常で, 妊娠中, 分娩中に薬剤投与を受けていない. 児は生下時顔面, 胸部に小出血斑を多数認め, やや増強したが4生日には消極した. 臍帯血の血小板数は75,000/μl, 10生日で血小板数32,000/μlと最低値を示したが, 何ら治療を要せず正常値に移行した. PT, APTT, HPTは正常範囲で, 出血斑以外に出血症状を認めず, CTで頭蓋内出血は否定された. 肝脾腫なく, 細菌感染症, TORCH感染症, 遺伝性疾患, 骨髄性疾患, 腫瘍, 血管腫, DICについて検索したが, すべて否定された. 免疫血清学的検査:血小板型, HLA型はそれぞれ, 父:Pl^A1 , Bak(a-), Yuk(a-b+), Sib(a-), Nak(a+) 母:Pl^A1 , Bak(a-), Yuk(a-b+), Sib(a-), Nak(a-) 児:Pl^A1 , Bak(a-), Yuk(a-b+), Sib(a-), 父:A2, A24/Bw52, B35(Bw4, Bw6)/Cw3, - 母:A26, A31/B7, Bw62(-, Bw6)/Cw3, Cw7 児:A24, A26/Bw52, Bw62(Bw4, Bw6)/Cw3, - 母血清中に抗HLA抗体を認め, その特異性は抗B51+Bw52+Bw59であった. この抗体は妊娠6週, 19週では検出されず, 30週と分娩時陽性となり, 今回の妊娠により産生されたものと考えられた. 児血清中には抗HLA抗体は検出されなかった. 母血清と父血小板との交差試験では, MPHA, PSIFTとむに陰性, 母血清と父リンパ球との交差試験ではLCT4倍, AHG-LCT8倍であるが, 父血小板で吸収後の血清では陰性であった. 結論:母血清中の抗体はよわい抗HLA抗体で, 児への移行を証明することはできなかったが, 本症例は抗Bw52抗体が関与したNAITPの可能性が強いと考えられた. | 
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| ISSN: | 0546-1448 |