多系統萎縮症の経過中に難治性イレウスを合併した1症例
「症例」62歳, 女性. 「疾患名」多系統萎縮症(以下MSA). 「障害名」歩行障害. 「病歴」1994年頃発症のMSAであり, 歩行障害の増悪により1999年11月に当科へ入院した. 2度の帝王切開と腹膜炎での開復術の既往がある. 「現症」意識清明, 見当識良好であった. 眼球運動は衝動性で, 指鼻試験では左にterminal tremorを認めた. 著明な首下がりと共に前傾前屈姿勢があり, 歩行器使用での小刻み歩行であった. MMTは頸部伸展3以外は4~5であり, ROM制限は頸部の屈曲30度と伸展-20度を認めた. B. I. は移動, 入浴に介助を要し70であった. シェロング試験での...
Saved in:
| Published in | リハビリテーション医学 Vol. 37; no. 12; p. 1039 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本リハビリテーション医学会
18.12.2000
|
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0034-351X |
Cover
| Summary: | 「症例」62歳, 女性. 「疾患名」多系統萎縮症(以下MSA). 「障害名」歩行障害. 「病歴」1994年頃発症のMSAであり, 歩行障害の増悪により1999年11月に当科へ入院した. 2度の帝王切開と腹膜炎での開復術の既往がある. 「現症」意識清明, 見当識良好であった. 眼球運動は衝動性で, 指鼻試験では左にterminal tremorを認めた. 著明な首下がりと共に前傾前屈姿勢があり, 歩行器使用での小刻み歩行であった. MMTは頸部伸展3以外は4~5であり, ROM制限は頸部の屈曲30度と伸展-20度を認めた. B. I. は移動, 入浴に介助を要し70であった. シェロング試験での陽性所見に加え, CVR-Rは1.08%であった. 腸音は微弱で強固な便秘があり下剤を常用していた. 「問題点」(1)基礎疾患に伴う歩行障害. (2)自律神経障害(起立性低血圧, 便秘症). 「経過」頸部の等尺性運動と歩行訓練を施行中に年末の外泊となったが, 腹痛と腹部膨満が出現し帰院した. 帰院時は腸管の蠕動音は聞かれず, 腹部X線では小腸ガスの貯留とニボーの形成を認めた. 閉塞性イレウスを考えイレウス管の留置とPGF2α製剤の投与を開始したが腸管運動は改善しなかった. 開腹術を施行し索状物の除去が行われた. 術後は良好な腸内容の吸引, 減圧と腸管蠕動の回復が得られた. 「まとめ」自律神経障害に腹部手術の既往が加わり, 難治性の経過となったと考えられる. 本症では強固な便秘症状を訴えることが多く, 消化器合併症の重篤化が懸念される. 同症では適切な排便が得られる生活指導や腹筋訓練などを十分に行う必要がある. |
|---|---|
| ISSN: | 0034-351X |