A糖転移酵素遺伝子トランスジェニックラットの作製とA抗原の臓器発現

ABO式血液型における糖鎖抗原や遺伝子構造は, 生化学的および遺伝学的にはほぼ解明された. しかし, それに対する抗体産生の謎は残されたままである. ABO抗原の不一致は, 輸血だけでなく移植医療においても, 免疫抑制剤が大きく進歩した現在なお, 大きな問題として残っている. 今回, それらを解析するためのモデル動物作製を目的として, 輸血, 移植実験が可能な実験動物, ラットにA糖転移酵素を遺伝子導入し, A抗原発現の有無を検討した. 「材料および方法」 A糖転移酵素(UDP-GalNac:Fuc a 1→2GalNacトランスフェラーゼ)cDNAはDr. Hakomoriより供与を受けた....

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 47; no. 2; p. 200
Main Authors 岩本禎彦, 亀崎豊実, 熊田真樹, 奥田浩, 袴田陽二, 小林英司, 梶井英治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.04.2001
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ISSN0546-1448

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Summary:ABO式血液型における糖鎖抗原や遺伝子構造は, 生化学的および遺伝学的にはほぼ解明された. しかし, それに対する抗体産生の謎は残されたままである. ABO抗原の不一致は, 輸血だけでなく移植医療においても, 免疫抑制剤が大きく進歩した現在なお, 大きな問題として残っている. 今回, それらを解析するためのモデル動物作製を目的として, 輸血, 移植実験が可能な実験動物, ラットにA糖転移酵素を遺伝子導入し, A抗原発現の有無を検討した. 「材料および方法」 A糖転移酵素(UDP-GalNac:Fuc a 1→2GalNacトランスフェラーゼ)cDNAはDr. Hakomoriより供与を受けた. このcDNAをpCAGGSのchicken actinプロモーターの下流に挿入し, トランスジェニック・コンストラクトとした. このベクターのエンハンサーからポリA付加配列までを切り出し, Wisterラット受精卵346個にマイクロインジェクションした. 受精卵は偽妊娠した雌ラット卵管内に移植し, 生まれた子供の尾より抽出したDNAとRNAを用いて, 遺伝子の挿入と転写産物の有無をスクリーニングした. A糖転移酵素mRNAの発現を認めた尾を抗Aモノクローナル抗体で免疫染色し, 抗原の発現を検討した. 「結果および考察」 生まれた子供56匹のうち12匹に遺伝子の組込みを認め, この12匹のファウンダーのうち6匹にmRNAの発現を認めた. 遺伝子の組込みのないものと, mRNAの認められない兄弟の尾組織は抗A抗体で染色されなかったが, mRNAの発現を認めた6匹の尾組織の表皮細胞は全て抗A抗体で染色された. しかし, 赤血球, 血管内皮は染色されなかった. その原因としてa1,2フコシルトランスフェラーゼ遺伝子, すなわちH型糖鎖の発現は, これらの組織で欠いているためではないかと考えられた.
ISSN:0546-1448