F-Fバイパス体外循環における人工心肺回路の工夫
【はじめに】我々は胸部下行および胸腹部人工血管置換術に際しての, 補助手段としてF-Fバイパス法を選択している. 本法における上半身の血行動態のコントロールは脱血量を制御することで行うが, 当初行っていた開放式回路では常に用手での脱血量調節が必要であり体外循環管理が煩雑であった. そのため通常の人工心肺回路にリザーバーバイパス回路を追加した半閉鎖式回路のシステムを採用した. しかし容量のコントロールが鉗子による操作であったため, 満足できるものではなかった. そこで, 今回容量のコントロールを目的とした回路(以下PUMP回路)を作製し, 主回路へ組み込むことで良好な体外循環管理が施行できたので...
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Published in | 体外循環技術 Vol. 35; no. 2; p. 195 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本体外循環技術医学会
01.06.2008
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ISSN | 0912-2664 |
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Summary: | 【はじめに】我々は胸部下行および胸腹部人工血管置換術に際しての, 補助手段としてF-Fバイパス法を選択している. 本法における上半身の血行動態のコントロールは脱血量を制御することで行うが, 当初行っていた開放式回路では常に用手での脱血量調節が必要であり体外循環管理が煩雑であった. そのため通常の人工心肺回路にリザーバーバイパス回路を追加した半閉鎖式回路のシステムを採用した. しかし容量のコントロールが鉗子による操作であったため, 満足できるものではなかった. そこで, 今回容量のコントロールを目的とした回路(以下PUMP回路)を作製し, 主回路へ組み込むことで良好な体外循環管理が施行できたので報告する. 【対象】2006年10月より2007年12月までにF-Fバイパスを施行した胸部下行大動脈瘤5症例, 胸腹部大動脈瘤3症例を対象とした. 【方法】人工心肺回路は通常開心術時に使用している当院独自のTERUMO社製回路(遠心ポンプ仕様)にリザーバーバイパス回路を組み込み, さらに静脈貯血槽と遠心ポンプヘッドとの間にPUMP回路を加えた閉鎖式回路とした. 体外循環中は泉工医科工業社製人工心肺装置HAS型ローラーポンプ(以下ローラーポンプ)とメラブラッドレベルディテクター(以下レベルセンサー)を連動させることで, 持続的に補液し, 上半身の循環血液量を調節した. また, CDIシャントセンサー回路は閉鎖回路内で再循環させたが, ECUM回路は静脈貯血槽に返血した. 【結果】今回作成したPUMP回路を使用し, さらにローラーポンプとレベルセンサーとを連動させることにより容量のコントロールが容易にできたため, 全例安全に施行できた. 【考察】F-Fバイパス法における上半身の血行動態は, 脱血量の調節が大きく影響するため開放式回路よりも閉鎖式回路が適していると思われる. 閉鎖式回路においては, 出血等による吸引回収血の容量のコントロールが問題となる. 今回, ローラーポンプとレベルセンサーを連動させ, 閉鎖式回路に組み込むことで循環血液量のコントロールが容易に行えた. また, ローラーポンプを使用することで急激な出血時にはポンプ流量を上げ, 右心房送血を行うことも可能である. さらに, PUMP回路にバイパスラインを設けたことにより, 開放式回路と閉鎖式回路の切り替えが円滑にでき, プライミング時のエア抜きが容易に行えると考えられた. また, ECUM回路の返血側を静脈貯血槽へ再循環させることで血液の滞留時間が短縮できたと思われた. 【まとめ】従来の半閉鎖回路での鉗子操作による循環血液量のコントロールに比べ, ローラーポンプとレベルセンサーを連動させた閉鎖回路を使用することにより, F-Fバイパス時の容量のコントロールが容易に行えることができた. |
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ISSN: | 0912-2664 |