ケルビズムの画像所見
ケルビズムは, 常染色体優性の遺伝的疾患で, 臨床的には, 対称性の下顎骨膨隆, 頬部の無痛性膨隆, 眼球が上方を向いて虹彩の下方に強膜を露呈する天使様顔貌を示すのが特徴であり, 病理組織学的には巨細胞肉芽腫の所見を呈する. われわれは, ケルビズムと考えられた1例を経験し, その画像所見の特徴について検討したので報告する. 患者は, 21歳女性で, 近歯科医にて, X線写真上で下顎骨の異常を指摘されたため, 同部の精査希望を主訴として来院した. 自覚症状は無く, 現症は両側頬部が対称性にわずかに膨隆していた. 家族歴においては, 母親ならびに姪が, それぞれ他病院において, 顎骨嚢胞あるいは...
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          | Published in | 歯科放射線 Vol. 40; no. 3; p. 221 | 
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| Main Authors | , , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            日本歯科放射線学会
    
        30.09.2000
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| ISSN | 0389-9705 | 
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| Summary: | ケルビズムは, 常染色体優性の遺伝的疾患で, 臨床的には, 対称性の下顎骨膨隆, 頬部の無痛性膨隆, 眼球が上方を向いて虹彩の下方に強膜を露呈する天使様顔貌を示すのが特徴であり, 病理組織学的には巨細胞肉芽腫の所見を呈する. われわれは, ケルビズムと考えられた1例を経験し, その画像所見の特徴について検討したので報告する. 患者は, 21歳女性で, 近歯科医にて, X線写真上で下顎骨の異常を指摘されたため, 同部の精査希望を主訴として来院した. 自覚症状は無く, 現症は両側頬部が対称性にわずかに膨隆していた. 家族歴においては, 母親ならびに姪が, それぞれ他病院において, 顎骨嚢胞あるいは腫瘍の摘出手術の既往があり, そのうち姪はケルビズムが示唆された. 患者に施行した画像診断法は, 単純X線写真(パノラマX線写真, 頭部後前方向撮影), 単純CT, ガドリニウム造影MRIであった. 単純X線写真において, 両側下顎骨顎角部から下顎枝にかけて, 境界明瞭な多房性の透過像が認められた. CTでは, 両側下顎骨大臼歯部から下顎枝にかけて, 境界明瞭で多房性の骨性隔壁構造をもつ軟組織濃度の腫瘤が認められた. 腫瘤は, 周囲筋組織よりも低い濃度を示し, 腫瘤によって舌側皮質骨は膨隆菲薄化し, 一部が消失していた. MRIにおいて, 腫瘤はT1強調画像では筋と同等の信号強度, T2強調画像では中等度~高信号を示し, ガドリニウム造影剤によって不均一に増強された. この増強は, 毛細血管に富むという病理組織学的特徴を反映しているものと思われた. 生検による病理所見では, 紡錘形細胞からなる, 細胞密度が高く密に増生した線維組織中に, 多数の多核巨細胞が不規則に存在し, 巨細胞肉芽腫と診断された. 画像所見として, 両側下顎骨に対称的に多房性の腫瘤が認められたこと, 病理学的に巨細胞肉芽腫と診断されたこと, 家族発症性が考えられたことなどから総合的にケルビズムと診断した. ケルビズムは, 極めてまれな疾患ではあるが, 上記画像所見の特徴が見られたときはケルビズムも鑑別診断のひとつに加えるべきであると考えられた. | 
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| ISSN: | 0389-9705 |