脊髄硬膜外に発生した悪性リンパ腫の1例

【症例】57歳男性. 2008年2月に右殿部~大腿後面痛が出現. 2009年10月に左殿部~大腿後面痛が出現し, 同月近医で腰部脊柱管狭窄症の診断で除圧術が施行されたが症状改善なし. 2010年1月に膀胱直腸障害, 2月に左下肢脱力が出現した. 経過中複数の医療機関を受診するも原因不明とされ, 3月末に当院神経内科を紹介受診. 画像上明らかな異常は指摘されず, 炎症性疾患が疑われ, ステロイドパルス療法が施行されるもその後も症状は進行し, 4月に当科紹介受診. 神経脱落症状出現から約4ヶ月後の5月にMRIで初めてL3/4椎間レベル硬膜外に腫瘍性病変を認めた. 生検でdiffuse Iarge...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 60; no. 2; pp. 326 - 327
Main Authors 村岡静香, 大友一, 原夏樹, 中村英一郎, 中村利孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 25.03.2011
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ISSN0037-1033

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Summary:【症例】57歳男性. 2008年2月に右殿部~大腿後面痛が出現. 2009年10月に左殿部~大腿後面痛が出現し, 同月近医で腰部脊柱管狭窄症の診断で除圧術が施行されたが症状改善なし. 2010年1月に膀胱直腸障害, 2月に左下肢脱力が出現した. 経過中複数の医療機関を受診するも原因不明とされ, 3月末に当院神経内科を紹介受診. 画像上明らかな異常は指摘されず, 炎症性疾患が疑われ, ステロイドパルス療法が施行されるもその後も症状は進行し, 4月に当科紹介受診. 神経脱落症状出現から約4ヶ月後の5月にMRIで初めてL3/4椎間レベル硬膜外に腫瘍性病変を認めた. 生検でdiffuse Iarge B cell lymphomaと診断され, 他院内科で化学療法を開始し, 現在症状軽快傾向にある. 【考察】脊髄硬膜外悪性リンパ腫はその腫瘤による神経圧迫により症状を呈し, 診断にMRIは有用である. しかし, 本症例では下肢の麻痺, 膀胱直腸障害が出現した後も画像上腫瘍の存在は明らかでなかった. 担癌患者における, 腫瘍自体や転移による直接的神経障害や, 癌の治療や癌に随伴する栄養障害, 日和見感染による間接的神経障害に基づかない神経障害は傍腫瘍性神経症候群と呼ばれ, 腫瘍や神経組織を抗原として認識する自己免疫的機序により惹起される. 本症例も同様の機序で症状が出現していたものと考えられる. 【結論】進行する下肢麻痺を認め, 画像検査で病変が明らかでない場合は悪性リンパ腫を含めた傍腫瘍性神経症候群も念頭におく必要がある.
ISSN:0037-1033