外傷後脊髄空洞症の経験

脊髄損傷者の予後が向上し, 寿命が延長するにつれ, また画像診断技術の進歩とともに, 外傷後脊髄空洞症が脊髄損傷者に後発する機能障害, 能力低下, 社会的不利の増悪要因として注目されるようになってきた. 症例1は受傷26年後激しい頭痛で腫瘍等の合併が疑われ, 精査の結果診断された. 症例2は不全麻痺で杖歩行可能が緩徐に進行増悪し, 30年後には起立歩行不能となり, 42年後褥瘡の治療で入院し診断された. 症例3は患者自身が麻痺領域の筋緊張の変化を自覚し, MRI検査で空洞症が明らかになった例で, 遡ってカルテ記録をたどると, 腱反射の変化を認めた. 脊髄損傷は非進行性との先入観があり, 外傷後...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 35; no. 2; p. 120
Main Authors 佐直信彦, 亀山順一, 漆山裕希
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 18.02.1998
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ISSN0034-351X

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Summary:脊髄損傷者の予後が向上し, 寿命が延長するにつれ, また画像診断技術の進歩とともに, 外傷後脊髄空洞症が脊髄損傷者に後発する機能障害, 能力低下, 社会的不利の増悪要因として注目されるようになってきた. 症例1は受傷26年後激しい頭痛で腫瘍等の合併が疑われ, 精査の結果診断された. 症例2は不全麻痺で杖歩行可能が緩徐に進行増悪し, 30年後には起立歩行不能となり, 42年後褥瘡の治療で入院し診断された. 症例3は患者自身が麻痺領域の筋緊張の変化を自覚し, MRI検査で空洞症が明らかになった例で, 遡ってカルテ記録をたどると, 腱反射の変化を認めた. 脊髄損傷は非進行性との先入観があり, 外傷後脊髄空洞症の初発の時期が不明確なこと, 受傷後年余を経て発症するために診断が遅れる. 経時的なMRI検査では早期からかなりの高率にみいだされるので注意を喚起したい. 治療はシャント術が適応となる.
ISSN:0034-351X