新生児輸血におけるWalking Donorの問題点

目的:新生児に対するWalking Donorからの輸血の状況を把握し, より望ましい新生児輸血の在り方を検討する. 対象:昭和59年1月より60年7月までにWalking Donorの検査依頼があった1歳未満の新生児, 乳児100例とその供血者202名について調査した. 結果:Walking Donorの事前検査で不合格となった者の原因は, 男性供血者137名中では, GPT30IU/リットル以上, 10.2%, HBs抗原陽性3.7%, 女性供血者65名中では, 貧血18.5%, 出産直後の母親13.9%などであり, 全体では26.7%が不合格であった. Walking Donorからの輸...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 32; no. 4; pp. 427 - 428
Main Authors 平野聡子, 田中真典, 鴛海久海子, 渡辺八重子, 坂本久浩, 大里敬一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 01.07.1986
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ISSN0546-1448

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Summary:目的:新生児に対するWalking Donorからの輸血の状況を把握し, より望ましい新生児輸血の在り方を検討する. 対象:昭和59年1月より60年7月までにWalking Donorの検査依頼があった1歳未満の新生児, 乳児100例とその供血者202名について調査した. 結果:Walking Donorの事前検査で不合格となった者の原因は, 男性供血者137名中では, GPT30IU/リットル以上, 10.2%, HBs抗原陽性3.7%, 女性供血者65名中では, 貧血18.5%, 出産直後の母親13.9%などであり, 全体では26.7%が不合格であった. Walking Donorからの輸血が行われた症例は70例で, 検査前に輸血されたものが2例, 申込み当日が24例, 翌日が12例であり, 検査申込みから48時間以内の症例が54%を占めていた. またWalking Donorからの輸血を行った期間は46例(66%)の症例では1カ月以内であったが, 24例では再検査を行わずに最高8カ月に渡って輸血が行われた. 1回の平均輸血量は生下時体重1,000g未満の超未熟児では26.5ml, 2,500g以上の児では83.8mlであり, 体重に比例して増加していた. また平均輸血回数は超未熟児, 極小未熟児(<1,500g)では, 19.3回, 14.3回と頻回であったが, それ以上の児では1.8~3.8回と少なく, Walking Donorからの輸血の割合も減少していた. 結語:生下時体重1,500g未満の児に対してはWalking Donorはかなり利用されているといえるが, それ以上の児に対しては, 1回輸血量が多くなり回数も減少することから, むしろ日赤血を有効に利用することを検討すべきであろう. また新生児に対してより安全な輸血を行うためには, 将来, 発症, キャリヤー化する可能性のある輸血後感染症の予防をも含めた供血者検査の基準と体制を作る必要がある. しかし, 現状では各種ウイルス検査を含めて, 当日や翌日中に結果を出すことは極めて困難であるため, 48時間以内の緊急輸血には, 当日あるいは前日採血の小分けされて新生児用に調整された日赤血が供給されることが望ましいと考える.
ISSN:0546-1448