弁膜症再手術, 心周囲癒着剥離困難症例の体外循環

【目的】4回目の心臓手術時に, 心周囲の癒着剥離が困難で, テーピングや上行大動脈遮断が不能なため, 体外循環の確立に工夫を要した症例を経験したので報告する. 【症例】73歳, 女性, 1981年AVR+MVR, 1993年reMVR+OTC+TAP, 1999年ASP closure, 2000年4月TSRによる右心不全症状が出現したため入院となった. 入院後, 内科的治療が困難となり, 4回目の心臓手術の適応と判断された. 【体外循環方法】F-F bypassによる超低体温循環停止下(最低膀胱温22.6℃)に, 右房切開創よりバルーン付き挿管チューブとオクルージョンバルーンを用いて体外循環...

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Published in体外循環技術 Vol. 29; no. 3; p. 273
Main Authors 大塚徹, 吉田雅人, 青木啓一, 朝倉利久, 榎本佳治, 稲井理仁, 久田義也, 古田昭一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術研究会 01.09.2002
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ISSN0912-2664

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Summary:【目的】4回目の心臓手術時に, 心周囲の癒着剥離が困難で, テーピングや上行大動脈遮断が不能なため, 体外循環の確立に工夫を要した症例を経験したので報告する. 【症例】73歳, 女性, 1981年AVR+MVR, 1993年reMVR+OTC+TAP, 1999年ASP closure, 2000年4月TSRによる右心不全症状が出現したため入院となった. 入院後, 内科的治療が困難となり, 4回目の心臓手術の適応と判断された. 【体外循環方法】F-F bypassによる超低体温循環停止下(最低膀胱温22.6℃)に, 右房切開創よりバルーン付き挿管チューブとオクルージョンバルーンを用いて体外循環を行った. 【結果】手術術式は三尖弁温存人工弁右房高位縫着術(Mosaic33mm), 手術時間12時間10分, 体外循環時間192分, 循環停止時間3分, 体外循環は補助装置なしで離脱できた. 右心不全が改善され, 第88病日に退院した. 【考察】当院では, 再心臓弁膜症手術を238例に施行し, そのうち, 4回目の心臓手術症例を9例経験した. 今回, これらの症例中, 初めて心周囲癒着剥離を途中で中止せざるをえない症例を経験した. テーピングや上行大動脈遮断不能になることが考えられる症例に対しては, バルーン付き脱血管, ハートポートなどを準備しておくことにより, 手術時間の短縮が可能であったと考えられた. 【結語】本症例では, F-F bypassによる超低体温循環停止下に右房切開創よりバルーン付き挿管チューブとオクルージョンバルーンを用いて体外循環を行う方法が有効であった. 再手術時の心周囲癒着剥離困難症例には, バルーン付き脱血管, およびハートポートなどを準備しておく必要性を認めた.
ISSN:0912-2664