向精神薬服用者に合併した慢性肺血栓塞栓症急性増悪の1例
症例は52歳, 男性. アルコール依存症, アルコール精神病および重度の不眠症に対して大量の向精神薬を服用中だった. 2005年8月某日外出中に呼吸困難感が出現し, 歩けなくなったため当院に緊急受診した. 動脈血液ガス検査では低O2血症, 低CO2血症を呈していた. 胸部X線写真では著明な心拡大および右第2弓と左第2, 4弓の突出, 心電図では右軸偏位と胸部誘導の陰性T波がみられた. 心エコー図検査では右心系の拡大および推定右室収縮期圧75mmHgの著明な肺高血圧が認められた. D-dimerが5.6μg/mLと軽度上昇しており, 胸部造影CT検査では右肺動脈主幹部および左右肺動脈分枝に壁在血...
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Published in | 心臓 Vol. 38; no. 7; pp. 712 - 717 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本心臓財団
15.07.2006
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0586-4488 |
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Summary: | 症例は52歳, 男性. アルコール依存症, アルコール精神病および重度の不眠症に対して大量の向精神薬を服用中だった. 2005年8月某日外出中に呼吸困難感が出現し, 歩けなくなったため当院に緊急受診した. 動脈血液ガス検査では低O2血症, 低CO2血症を呈していた. 胸部X線写真では著明な心拡大および右第2弓と左第2, 4弓の突出, 心電図では右軸偏位と胸部誘導の陰性T波がみられた. 心エコー図検査では右心系の拡大および推定右室収縮期圧75mmHgの著明な肺高血圧が認められた. D-dimerが5.6μg/mLと軽度上昇しており, 胸部造影CT検査では右肺動脈主幹部および左右肺動脈分枝に壁在血栓が認められた. ヘパリン15,000単位/日および, 組織型プラスミノゲンアクチベーターのモンテプラーゼ160万単位による血栓溶解療法が行われ, その後ワルファリンによる抗凝固療法が開始された. 自覚症状および酸素飽和度は改善したが, 血栓溶解療法後も肺血流シンチグラフィでは左右肺野に広範な楔状欠損像が認められた. 心エコー図検査でも推定右室収縮期圧60mmHgと肺高血圧は持続していた. 本症例はこれらの臨床経過および検査所見により, 慢性肺血栓塞栓症の急性増悪と診断された. 向精神薬服用者における肺血栓塞栓症の合併が注目されているが, ほとんどが急性肺血栓塞栓症であり本症例のごとき慢性肺血栓塞栓症の報告は極めて稀である. |
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ISSN: | 0586-4488 |