局所脳血流からみた蘇生のための緊急心肺バイパス

心肺機能停止を実験的に誘発したあと, 緊急心肺バイパスを用いた蘇生術を実施し, 脳蘇生への効用を局所脳血流を指標に検討した. <方法>常温, GOE麻酔下の雑種成犬に心室細動を誘発し, 同時に気管内チューブを閉塞することで心肺機能を停止させた. 心肺機能停止15分後より, 心マッサージ, アドレナリン静注, 除細動など従来の心肺蘇生法を3分間行ったあと, 大腿動脈, 静脈間でV-Aバイパスによる蘇生法を開始した. 局所脳血流は頭蓋骨に開けたburr holeよりレーザードップラー血流計のプローブを挿入して観察した. ほかに心電図, 観血的動脈圧, 肺動脈圧, 心拍出量, 脳波, 食...

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Published in蘇生 Vol. 9; p. 53
Main Authors 橋口清明, 定永道明, 芦村浩一, 坂元正克, 加納龍彦, 森岡亨
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 01.04.1991
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ISSN0288-4348

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Summary:心肺機能停止を実験的に誘発したあと, 緊急心肺バイパスを用いた蘇生術を実施し, 脳蘇生への効用を局所脳血流を指標に検討した. <方法>常温, GOE麻酔下の雑種成犬に心室細動を誘発し, 同時に気管内チューブを閉塞することで心肺機能を停止させた. 心肺機能停止15分後より, 心マッサージ, アドレナリン静注, 除細動など従来の心肺蘇生法を3分間行ったあと, 大腿動脈, 静脈間でV-Aバイパスによる蘇生法を開始した. 局所脳血流は頭蓋骨に開けたburr holeよりレーザードップラー血流計のプローブを挿入して観察した. ほかに心電図, 観血的動脈圧, 肺動脈圧, 心拍出量, 脳波, 食道温, 尿量, 血液ガス, ヘモグラム, 電解質などをモニターした. <結果>細動発生と同時に局所脳血流は途絶えた. 15分間の心肺機能停止のあと, 閉胸式心マッサージを行ったが十分な局所脳血流は得られなかった. そこで, 心肺バイパスを開始すると, いまだ, 心停止中にもかかわらず, 局所脳血流は著しく増加した. 心肺バイパスを一時中断し, 開胸式心マッサージを行っても, 局所脳血流は減少傾向を示し, 心肺バイパスを再開すると, 局所脳血流は回復した. また, 心肺バイパス下にカルシウム拮抗薬を用いても必ずしも局所脳血流は増加せず, カテコラミン持続投与による高血圧維持が局所脳血流維持に効果的であった. <考察>蘇生術施行初期より脳蘇生を目指した蘇生法を行うべきと考える. 緊急心肺バイパスによる蘇生法は, いまだ心拍再開ならぬ時でも十分な脳血流を約束するもので, 閉胸式心マッサージ, 開胸式心マッサージに勝る. 心マッサージ下に経皮的挿入可能な脱送血カニューラを大腿動, 静脈から穿刺挿入し, 迅速にV-Aバイパスを開始すれば, 脳が虚血に晒される時間を短縮でき, 脳蘇生に役立つと考える.
ISSN:0288-4348